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「無理だよ!」

部活終了五分後、及川さんが叫んだ。

「と、言われましても……は、ハンデ、いりますか?」
「要らないって言いたいけど要る!」
「ダサッ」
「ダサくても神風ちゃんの名前が知れるならいい!」
「気持ち悪いなここまでくると」

教科書を手にした花巻さんがページを捲った。その教科書は既に私の頭の中にあるので、問題文が出された瞬間に答えが分かってしまう。とりあえず十秒は動かないというハンデをつけてもう一度。

「えっと……ごめん俺も教科書見るの辛いから適当に問題出すわ。794×48÷6+78は?」
「はっ!?なんて!?ルール無視しないで!」
「……7、8、9……、い、いいですか?6430」
「え、正解?誰か計算して」
「正解正解」

潰れる及川さんと私に向けられる尊敬の眼差しから目を逸らすように、私は窓の外をちらりと見た。少し赤くなった空に小さな現実逃避をして、またしても繰り出される問題を聞いた。

とりあえずまだ及川さんが諦めていないようなので、この頭脳対決は続きそうだった。恐らく私の全勝になると思うが、彼が諦めていない限りは勝敗は分からない。

「うわっ、絶対分かる!分かるんだけど待って!」
「8、9、10。ええと、recognitionは認識、ですね」
「正解〜」
「何かちょっとお前のこと不憫に思えてきたわ」
「……神風ちゃん、二十秒にしない?」
「いいぞ神風、もっとやれ」

岩泉さんが私の頭をぽんと優しく叩く。どうやらこの場で圧勝し続けている私の味方をわざわざしてくれるのは岩泉さんだけらしい。嬉しいが、岩泉さんは及川さんを応援しなくていいのだろうか。

私の下の名前を賭けて始まったこの頭脳対決だったが、対決内容を私の得意分野に合わせたばかりに、及川さんが散々な目にあっている。合わせているのは私なのだけれど、同情が無いわけではなかった。私は私の頭脳のことをよく分かっているから。

「How long is this going to continue?」
「また英語!?持ってる数学の教科書はなんなの!」
「ダミー」
「そういうせこいことしないで!え、えーと」
「8、9、……いいですか?」
「神風ちゃん待って!」
「いつまでそれを続けるんですか、です。砕けた言い方だと、これはいつまで続くの?になります」
「はい正解」
「助っ人を要求する!」
「無駄じゃね?」

ぐぬう、と唸る及川さんが、何だか面白く見えてきた。少しだけ口角を上げると、彼らはぽかんとしてからまた騒ぎ出した。烏野に負けず劣らず、賑やかな場所だった。

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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時

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