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「あ、あれっ?」
部活後、きちんと清水先輩と後片付けまでやって別れた後、携帯を出すために鞄を漁っていたら、鞄に入れていたはずのノートが一冊無かったことに気づいた。最悪だ、とため息をつく。今までこんなことは無かったのに、慣れないことをして気が緩んでいたのかもしれない。
とにかく慌てて学校へと戻らなければ校門がしまってしまう。時刻を確認するが、しかし無情にも校門が閉まる時間はとうに過ぎていた。明日取りに行くしか無さそうだ。そうなったら仕方ない、と落ち込んでいた心を自分で励ましてくるりと帰路を振り返る。
昨日よりもどっぷりと暗い道だったが、流石にもう道は覚えている。明かりが無かったからといって特に問題は無い。不安要素があるとすれば、
「…………」
何者かに付けられていることだった。
後ろから小さな足音が追ってくる。学校を出て少ししてから私の後ろを歩いてくるのだ。先程携帯を確認する時に止まった時は同じように止まったし、今は私と同じ速度で歩いている。
ストーカーなんて漫画の中だけだと思っていたが、こうして付けられていることが事実だった。非常に恐怖心を煽られるが、振り返りたくはない。もし相手に「私が気づいている」と思わせてしまったら、すぐさま距離を詰められて襲われる可能性もある。気づいていないフリをしなければ。
私は至って冷静に頭で考えながら、しかし実際はそんなに割り切れず、あからさまに左右をキョロキョロと見回してしまう。後ろを向いていないだけまだ良かったが、後ろの相手に悟られてしまうのも時間の問題だった。
携帯があるということをすっかり忘れたまま角を曲がり、それと同時に走り出した。すぐさま近くの路地を曲がって、家を真ん中にしてぐるりと一周するように走る。
後ろの人もそれに付いてきた。というより、私よりも早いペースで走っているらしく、どんどん足音が近づいてくる。
「っおい!」
「へうっ!?」
捕まるのでは、と少し泣きそうになっていると、後ろから聞いた事のある声が叫んできた。思わず悲鳴を上げて後ろを振り返る。
「……あ」
勢いよく息を吸ってしまって咳き込んでしまった。後ろから追いかけてきた彼は呼吸を乱さず、私を上から見下ろした。
「か、か、影山、くん……」
「何してんだ、お前」
「こ、こっちの、台詞、だよ……もっと、は、早く、声掛けてよ……」
後ろから追いかけてきていたのは彼だったのだ。私は息を整えながら、くらりと目眩をおぼえた。
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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月26日 4時