月を見つけて【ワンパンマン】

ー家出卒ー ページ27

「私、この家を出ようと思います」

　時過ぎ、数日後。いきなり訪れたジェノスさん(これからは同居人)と、サイタマさんに改めて言った。改めてというのは、前々から考えていたということである。

「は？」

「いきなりどうした」

　理由は4つ。1つは、20歳になる女性が男性と一つ屋根の下はやばいのでは無いかと今更ことを考えたこと。

　2つは、ソニックさんがサイタマさんを探すついでに私を探してしまうことを恐れてしまったから。

　そして、唯一この家に固執していた『サイタマさんの生活リズムの不安』がジェノスさんが来たことによって解消されたから。

　最後は

「父が逝去しました」

　ソニックくんから逃げていた帰り道、たまたま家の前を通った。誰も気が付かなかったが、近所の人が話しているのが耳に入った。

「母は目に病を抱えていて、一人暮らしなんて……できるはずがありません」

　2人は何も言ってこなかった。ただ私の方を見て、真剣に話を聞いてくれていた。サイタマさんも静かに手を置いて聞いている。

「じゃあ、自宅に帰るんだな」

「はい」

　するといきなりサイタマさんが私に向かって、手を差し出した。いきなりの事だったので怒られるかもしれない、目を閉じると、その感覚は頭に来た。

「よかったじゃねぇか。帰る場所があって」

　私は少し黙って、泣きそうな声を堪えて、ただその場に座り込んだまま。ありがとうございます、ありがとうございます、とお礼を言った。

ーただいまー→←ー挨拶ー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す