51.試合�� ページ1
ようやく試合が始まった。
試合は深津のチームが優位で、
どんどん点差がついていった。
素人から見てもわかるほど深津はやっぱり上手で、
彼がチームを動かしていると言っても過言ではないほどだ。
稔くんのチームが苦しそうなのはもちろんだが、
もちろん稔くんもいつものように窮屈なプレイをしている。
ああ…負けてしまうのだろうか。
そう思った時、試合途中だが、
突然稔くんと深津が何か話をしている様子が見てとれた。
…なんだろう。
敵チーム同士で何か話すことがあるのだろうか。
不思議に思いながらそれを眺めていると、
ふと稔くんがこちらに顔を向け、目が合った。
稔くんは驚いた様子で、
目を見開けたままこちらを見つめていた。
…稔くん、今私が来たことに気づいたのかな？
私はなぜ見られたかはわからず、
少し首を傾げて稔くんを見つめ返した。
その直後からだろうか、
稔くんのプレイはみるみる変化していった。
今までは周りを活かすようにプレイしていたバスケだったが、
稔くんは自分でボールを運び、シュートを決めた。
稔くん1人のプレイでみるみる縮まっていく点差に驚かずにはいられなかった。
何より私は見てきた稔くんのプレイの中で、一番かっこよかった。
そして何より楽しそうだった。
稔くんがバスケをやっていて笑ったところを見たことがなかったから。
シュートを決めた後に、
ニッと自信ありげに口角を上げた稔くんを見て、
見にきてよかったと心から思った。
…でも、
深津は稔くんになんと声をかけたのだろう。
きっとあれから稔くんのプレイが変わった。
「…やっぱすごいな、深津は」
ずっと変えられなかった稔くんの心まで変えて、
プレイまで変えちゃうんだから。
ちょっと嫉妬しちゃうな。
そんなことを考えながら試合を見ていた。
そんな時、
突然私の方に向かって走ってくる足音が聞こえた。
足音は地面が揺れているかのように大きな音を立ててこちらに迫ってくる。
「A！」
「やっぱりここにいた！」
声の方を振り返ると、
そこにはアミがいた。
とても焦っているようで、
心配そうな顔をしてこちらに近寄ってくる。
周りの観客もアミの声に驚いたのか、
私たちの方を見ていた。
そして私はアミの次の言葉に、
心臓が握りつぶされるような思いになった。
「Aのお母さん、病院に運ばれたって」
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作者名：usa | 作成日時：2023年11月6日 21時
