あの海が見える場所 26

Yokohama 緑 ページ1

『遅いな、やっぱり。

部屋ついたらメールしてな。

起きてるから。』



優しい、あの頃と同じ。



ポケットから取り出したハンカチで涙をふいて駅まで急ぐ。



早く帰ろう。



シゲが寝るのが遅くなってしまう。



コンビニにもスーパーにも寄り道せずに帰る。



コートを脱ぎながら時計を見るともう23時近い。



寝てるよな、、、。



起こしたくない。



けど、待っているだろうから、シゲなら。



『今着きました。おやすみ。』



それだけ。



なのにすぐに震える携帯。



メールじゃない。電話。



「もしもし？」



「お疲れ〜。今日も遅かったなぁ。

ほらな？今日は無理やったって。」



「そうやな。ごめん。

シゲ、明日も早いのに。

早く寝てな。」



「うん。神ちゃんがちゃんと帰ったかどうかだけ心配やからな。

ほな寝るな。おやすみ。」



「ありがとう。おやすみ。」



シゲ、6時間しか眠れへんやん、、、。



9時とかに眠くなってたくせに。



だからって夜のメールは終わりにできそうもない。



シゲが心配するから。



それに、、、オレが繋がっていたいから。



土日はもちろん忙しく、シゲとは朝晩のメールのみ。



月曜日の朝には中間さんに捕まり、トンカツ食べたことを白状させられる。



「神ちゃん、ちゃんと自分の気持ち大切にしてな。」って。



オレの気持ち、、、オレの大切にしたいもの、、、。



ぐるぐる悩んで数日が過ぎる。



約束の日の前日の夜、確認のメール。



『無理そうやったらメールしてや。』



っていう気遣いと、



『待ってるから。』



という多分本音。



だからオレも、



『大丈夫。もしかしたら少し遅くなるかもしれないけど待ってて。』

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