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【第伍話】 横浜:探偵社内:医務室 ページ10

「ッ、アンタ……?!」

腕を握られた与謝野は、咄嗟に青年の手を振り払おうとした。

此の時間にでも少女は死に一刻一刻と近付いて居るのだ。
幾ら医者の与謝野と云えど、時間は無駄に出来ない。

些細な事が、患者の命を左右する。

然し青年の手はビクともせず、更に握る力を強めた。
ギチリと腕を握った侭……動かない青年が口を開く。

「お願いだ、俺と【約束】して呉れ人の仔よ。

主を……彼女を必ず助ける。と」

与謝野を見下ろす青年は握る手に力を入れ乍ら真っ直ぐに与謝野を見つめる。
其の視線は何もかも見透かす様で、有無を云わさぬ口調だった。

無機質で冷たい柑子色の瞳が、与謝野を射貫く。

此処で嘘を吐こうものなら直ぐさま(くび)が飛ぶであろう……と無意識に思う程だ。

傷だらけだが尚も強い力で自分の腕をギリッと握る青年に一瞬眉を顰めた与謝野だが、確りと青年と目を合わせ堂々と云ってのけた。

「約束するさ。………(アタシ)に任せな」

「―――【約束】だ」

そう目を細めて呟いた青年は、与謝野の腕からそっと手を離した。

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医務室から青年を出した与謝野はパタンッと扉を閉め、鍵を掛ける。

チラリと自分の腕を見れば、まるで何かの印(・・・・)の様に青年の紅い手形が浮かんで居た。

強く、強く握られた腕。
無機質で他者を射貫く瞳。

少し速まった鼓動を落ち着かせる様に、目を閉じ一呼吸。

ゆっくりと息を吐き、与謝野は右手に持った小ぶりな短刀(ナイフ)を握りしめる。

(何を緊張するンだい、与謝野晶子)

(此処は医務室。何の心配も無い場所さ……
妾は、もっと過酷な現場に遭った事が有るだろ?)

一呼吸してからゆっくりと目を開け、寝台に向かう。
ぽたぽたと滴る赤色は、まるで制限時間(タイムリミット)を示して居る様だ。

《此の子が何者だか知らないけど、死なす事はさせないサ》

「………ふゥ…

さァ、始めるよ」

―――『君死給勿(キミシニタマウコトナカレ)』―――

【第陸話】→←【第肆話】 横浜:武装探偵社事務所



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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時

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