【幕間 壱】 ページ45
「……」
【太宰 治】は、歩いて居た。
大勢の人間が行き交う活気ある街の大通りに、長い砂色の外套がひらりと揺れる。
喧騒渦巻く横浜の中で、『一般人』は今日も変わらない日を過ごして居た。
人は他人に興味を抱かない。
抱くのならば――隣を歩く太宰が包帯まみれの変人だと気付くだろう。
何時もは飄々と薄笑って居るその顔が、今は冷たく無機質だと判るだろう。
太宰は歩みを進め、或る図書館で脚を止めた。二・三階程の高さの一般的な図書館。
……
太宰は図書館の入口をくぐり、受付を過ぎて館内をぶらつく。
本日の利用状況はそこそこ人が居る、と云う感じだ。多過ぎず、少な過ぎす。親子や学生、各々が好きな様に時間を過ごして居る。
図鑑、時代小説、娯楽本、絵本――……
多くの本が陳列された棚を通り過ぎ、奥の突き当りにある『国家・政治』と
「ねぇねぇ〜……君に一寸伝えて欲しい事があるんだけど」
胡散臭い笑みを浮かべた太宰は、ぽむぽむと棚の前に立ち本を選んで居た男性の肩を気安く、まるで友人の様に話し掛けた。相手が驚きの声をあげる前に、一方的に用件を話す。
「君の上司の一人にさ、黒髪で丸眼鏡で学者風で気難しげで眉間の皺が取れてない男が居るでしょう?その人に『お友達が来ましたよ』って伝えて呉れない?
……
一方的に話し、相手が口を開く前に太宰は「宜しくね〜♪」と手を振り乍ら歩き出す。
太宰が移動したのは『歴史資料(国内)』の棚。数米の本棚を歩き乍ら目を通し、目当ての本を見付けた太宰は立ち止まって本を出した。
(……あった、之だ。 【現代版・刀剣図録】)
太宰が手に取ったのは、数糎の厚さがある古めかしい図録だった。内容は題名の通り、日本刀の事が事細かに記された図録である。写真や絵で、装飾から歴史迄綴られて居る。
太宰はその図録を一気に捲り、数秒で裏表紙迄辿り着く。そうしてもう一度、今度は明確に目当ての頁を開いた。
一見、流し読みをしただけと思われるが……太宰は凡ての頁の中から明確に頁を開いたのだ。
太宰が目を止めたのは、それぞれ二振りの刀が載って居る頁。
一つは太刀が、一つは脇差が。
「……【膝丸】、【堀川国広】」
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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時