【第弍拾陸話】 横浜:探偵社内:事務室→医務室 ページ35
敦は伝え忘れの無い様に言葉を選び乍ら膝丸達の話を伝えた。
『凡ての名を教えるな』と云われた事。二人は表側の人間ではないだろうと推測される事。
個人で一振ずつ帯刀して居る事。
ある限りの情報を話し、福沢と乱歩は敦の話を黙って聞いた。
『帯刀して居る』と聞いた福沢が一瞬だけ表情を動かしたが、特に質問もせず敦の言葉に耳を傾ける。
福沢の隣では乱歩が少し目を開け、黒縁の眼鏡を取り出した。
敦の話が終わり福沢と乱歩は再び医務室に向かい、静かな音なき扉の前で「失礼する」と云って扉を開ける。
医務室内では膝丸と堀川が静かに座って居たが、福沢の声と共に立ち上がり扉の方向を見据えた。
二人共扉の向こう側の人物が
扉がゆっくりと開き、福沢と膝丸の視線が交わる。
二人の眼が合う刹那、福沢の躯に電撃が迸る様な感覚。
(――太刀、加え上段!!)
圧倒的強者に邂逅した時の衝撃。脳に響くは『奴には勝てぬ』と云う武人の直感。
若し、此処が戦場ならば相手は瞬きの合間に福沢の頸を撥ねれるであろう。
__確実に彼処が上手。
__自分が、勝つ事は出来ないだろう。
福沢は探偵社の社長になる前には剣士として刀を振るって居た。
『古剣士 銀狼』__そう恐れられる名を残す程に、福沢は剣術の達人であった。
今でこそ帯刀はしていないが、自宅には己の振るった刀が置かれて居る。
もう何十年も前に刀を振るう事を辞めたとは云えど、鍛錬は未だ続けて居た。
その福沢さえも慄く、達人の技量を越す『強さ』を福沢は膝丸に感じた。
一方で膝丸も、嘗ての
そして福沢は自分達に向ける意志の中で信念、誠実さ、邪なる心が無いと判った。
神に対して人間が隠し事等出来る訳が無い。
福沢の魂の清らかさは、判断するにあたって確実な証拠だ。
自分と立場は違えど、『振るう者』。
此の人間は、『信じるに値する』。
膝丸が理解した様に、堀川も又理解しただろう。膝丸は傍らで警戒心が緩まるのを感じた。
「……武装探偵社が社長、福沢と申す」
短く、一分にも満たない静寂を福沢が破る。
福沢の胸内に迸った戦慄に気付けたのは、隣の乱歩だけだろう。
「……膝丸だ。此の度は瀕死の重傷治療、感謝する」
「堀川です。助けて頂き……有難う御座います」
遂に、彼等が邂逅した。
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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時