【第弍拾漆話】 横浜：探偵社内：医務室 ページ36
お互いに名乗り、膝丸達は礼を述べた。
「否、構わぬ。困って居る者に手を差し伸べるのが探偵社の信条だ。
『義理をかく、心情をかく、恥をかく』。……我が社員は、当然の事をした迄」
「……そうか。恩に着る」
探偵社に来てから初めて、膝丸は人間に対する強固な警戒心を少し緩めた。
非道を行う者だけが人間では無い。それを膝丸達は知っては居るのだ。
「……貴君達について、少し尋ねたい事がある。此処で構わない、少し時間を――」
福沢が用件を云い終わる手前、
ぞわッ
不意に、全身が竦み上がる悪寒。
足先から頭にかけて粘り付く様な重く苦しい黒い霧が、唐突に現れ一瞬で医務室を覆った。
「ぐッ……乱歩？！」
霧が被さる躯はまるで深海に呑まれる様に重く、その霧が喉元に纏わり付けば頸を絞め上げられた様に息が苦しい。
福沢は隣に居る筈の姿を探した。
「……こ、こっ！……此れ、異能じゃな、い！……女の子、から出てる！」
青白い顔だが、乱歩は確りと意識を保って居た。
乱歩は膝を付きそうになり乍らも、黒霧で見えない寝台の方向を指差す。
「――クッソ、矢張り来たか！！」
「主さん！！」
堀川の叫び声が耳に届く。
「堀川、主を呼び続けろ！」
膝丸の鋭い声が黒霧の中響き、続けてチャキッと高い金属音。
「……卑しい
スラッ＿＿と膝丸が刀を抜き、構える。
黒霧によって膝丸の姿さえも見えないが、福沢は直感的に膝丸が『何かをしようと』して居るのが判った。
「福沢、頭を下げろ！！」
膝丸の声と共に福沢は乱歩を抱えて床に伏せる。
福沢達が伏せると同時に膝丸が踏み込み、ぶおんッ！と二人の頭上に一閃。
福沢と乱歩を纏って居た霧は膝丸の斬撃と共に刀に込めた浄化の力によって薙ぎ払われ、二人を覆って居た霧が断ち切られる。
霧が払われた事により少し息が整い、福沢と乱歩は周りを見る余裕が出来た。
膝丸は半円状に霧を払い、自分達と福沢達の間の床に境界線を引いた。
薄緑色に淡く光るその『線』から霧は出て来ない。
福沢が視線を動かせば黒い霧の中では寝台に横たわる少女を中心に黒霧は滲み出ており、堀川が少女の手を握り乍ら呼び掛け続けて居た。
「そっちに行っちゃ駄目だよ主さん！戻って来て！呑み込まれないで！」
黒霧に覆われ乍ら堀川は必死に呼び掛け続ける。
目の前で起こる異常な光景に福沢と乱歩は唯、息を呑む事しか出来なかった。
さかいめのあくむ→←【第弍拾陸話】 横浜：探偵社内：事務室→医務室
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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした！！とても楽しい作品でした！！ (2020年10月11日 1時) (
レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います！続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ！リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね？)でお願いします！ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：焼きまんじゅう | 作成日時：2017年10月9日 5時
