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【第弍拾弍話】 横浜:探偵社内:応接室→医務室 ページ29

互い違いに間違った認識を頭の中で決定した時、応接室に赤茶色の眼鏡を掛けた女性事務員が顔を覗かせた。

「皆さん、女の子の治療が終わったと与謝野女医がお呼びですよ」

ニコッと人の良い素朴な笑顔を浮かべ、事務員――春野は膝丸達に出された飲まれて居ないお茶を回収して退出した。

「……もう、治療が済んだのか?」

ちらりと時計を見て膝丸は訝しげに問う。

自分達の主の事は心配だ。本来ならば駆け付けて無事を確認したい。
が、目の前に『人間』が居る以上警戒は怠らない。

身が擦り切れそうな程心配だが、囁きに惑わされ背後から……等は御免被る。

「……与謝野さんも異能者でしてね、瀕死の重傷者を治すのはお手の物です。

寧ろ今回は時間が掛かり過ぎ……ですかね。
本来ならこんなに時間が掛からず、一瞬で治せる筈ですが……」

そう呟いた太宰はピコンッと何か閃いた様な仕草をした。
そして顔を輝かせ、パチんッ☆と手を合わせ高らかな声で云う。

「そうだっ!与謝野さんの異能力を見れば呪術と異能力の疑問も解消される筈!
膝丸さん達も与謝野さんの治療を受けては如何です?

……まぁ一寸特殊な行程でですが」

突然脳天気に叫んだ太宰に(因みに最後だけ小声である)膝丸と堀川は「何だ此奴」「いきなり何?」と引き気味に太宰を見た。

太宰が脳天気に突拍子もなく何かを始めようとする場合、大抵ろくな事じゃ無いと知って居る敦は頬を引き攣らせる。

「一寸、太宰さん……?」

「私達の中でも与謝野さんの異能力は判り易く安全!
加えて膝丸さん達は怪我人だ。与謝野さんの異能を体験してみては?」

名案(ナイス アイデイア)!」と云う様に瞳を輝かせる太宰。
何処ぞの売り込み(セールス)の様な口調に、敦は白い目を向けた。

「……いや、別に異能力と巫術に関して興味は無い。

兎に角、怪我は【治った】んだな?

俺達はそれだけで良い。俺達にとって一番大切なのは彼女だからな。
それに……」

膝丸は最後に声を落として「俺達の傷は、唯の人間には治せないだろう」と呟いた。

「え?」

最後の言葉を理解出来なかった敦が、聞き返そうとした瞬間に堀川が立ち上がる。

「医務室に、行って構いませんよね」

少し眉を寄せ「もう話は無い」と云わんばかりの視線の堀川は敦達にもう踏み込むな。と抑止して居るような気がした。

「えぇ。私達も行きましょう」

応接室に不穏な空気が流れる前に、太宰も立ち上がった。
四人は医務室に向かう。

【第弍拾参話】 横浜:探偵社内:医務室→←【第弍拾壱話】 横浜:探偵社内:応接室



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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時

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