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潮風の過ぎる地で ページ12

抱えられた手から、落ちてしまった。

先刻(さっき)迄は暖かく、愛おしい霊力に包まれて居たのに。
膨大な風を感じた瞬間、力が弱くなった手からするりと通り抜け堕ちた。

重なり合って巡って居た力が途切れ、供給がブチリと止められる。

暖かさが、ぬくもりが離れて愛おしいあの人が見えなくなる。

《待って、待って下さい、主様!!》

不完全に巡った霊力が、自分を構築していく。

分け与えられた霊力は自分の本当の姿を保てる程には蓄積されたが……人型になるには足りなかった。

見た事の無い建築物が連なる地に、抵抗も出来ず落下する。

風を受けて、燃えて流れる流星の様に重力に従い、落ちて行く。

__此の侭だと、僕は……?

脳裏に『最悪の場合』が過ぎる。

__こんな高さから普通に落ちたら、助からない。

喩え神の端くれだろうが、実体がある分厄介だ。

__ぼろぼろになって折れるのは、厭だ。

未だ、何も出来ていないのに。
折角、永遠の幸福を手に入れたのに。

《……仕方、ありませんねッ!!》

空中で(おおよ)その落下地点を確認してから、地面から何米か離れた手前で鞘を消した。

自分の力が形となり、桜の花弁が上へと吸い込まれて行く。
鞘が消えた事により剥き出しになった刀身を下にして、上手く地面に刺さる様にする。

___ドンッ!!

放射線状に隕石孔(クレーター)を作り、一か八かで実行した着地は上手くいった。

又も力を使い、鞘を元に戻す。
鞘で刀身は地面に刺さらなくなり、支えを失った自分はパタリと倒れた。

《……願わくば、もう一度……》

人気(ひとけ)の無い薄闇の場所で、動かす事の出来ない躯から伸びる愛おしい人の唯一の繋がりを示す、霊力の糸を握りしめた。

潮風が通り過ぎて往く。

【第漆話】 横浜:探偵社:探偵社事務所→←【第陸話】



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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時

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