敗者達8 ―敗者 ページ8
・
「エレン、まだ動いてはダメ。安静にして」
その様子をみてミカサが心配そうに声をかけた。
「……ミカサ、……女型…は…？」
エレンはかろうじてそう尋ねた。
「……逃した」
「………え？」
ミカサから返って来た言葉に唖然とする。
「…逃した…って何で…。俺は……っ」
…女型と戦って……
巨大樹の森の中での、激しい戦闘。
繰り広げられる格闘術。
確かに手ごたえがあった。
ヤツの身体を何度も何度も殴り飛ばした。
両腕を構え、俺が最後に、見たものは…――――
「…俺は…女型に負けたのか…？また…お前に、助けられたのか…？」
「……リヴァイ兵長が…来て、」
「…リヴァイ…兵長…？」
「……今はとにかく休んで。もう…壁に着くから」
ミカサの言うとおり、進行方向に目を向ければ、見慣れた壁がそびえ立っていた。
カンカンカン、開門を知らせる鐘の音が鳴り響く。
「なんだ、今朝よりかなり数が少なくなってるじゃないか」
「朝出ていったと思ったら、もうとんぼ返りか？一体何しに行ったんだ？」
「さぁな。いつも通り俺らの税をドブにでも捨てて来たんだろうぜ」
浴びせられる民衆たちの心ない罵声に思わず身体を起こすと、ミカサの制止も聞かずエレンは声の主を睨みつけた。
耐えるように強く唇を噛む。
何も知らないくせに、何も知らないくせに、何も知らないくせに…――ッ！！
自分達の敵が何なのか
ヤツらがどれ程圧倒的な力を持っているのか
どんな思いで、みんなが壁外で戦っているのか
そして…どれ程の命が、無惨に奪われたのか――
その時ふと、キラキラと瞳を輝かせながらこちらを見ている男の子と目が合った。
「わぁ！あれが調査兵団か！あんなにボロボロになっても戦い続けてるなんて本当にすごいやぁッ！」
その憧れの眼差しが幼い日の自分と重なり、エレンは思わずパッと視線を逸らした。
逸らさずには、いられなかった…。
そんな…カッコいいもんじゃない
現実はそんなもんじゃ…
壁外で味わった惨劇
未来を奪われた仲間達の姿
失われた、大切な絆
大切な、仲間達…
気づけば、ボロボロと次から次へと涙が溢れていた。
何もできなかった
文字通り何も…
巨人化できたって、結局自分はその力を何一つ活かすことができなかった
何の成果も得られず、ただ多くの犠牲を重ねただけ
俺達はただの
ただの敗者だ…―――
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berumanami0220(プロフ) - こんなに長く書き切ってくれてありがとうございました！すごく素敵なお話でした (4月6日 19時) (
レス) id: c0ff4540c3 (このIDを非表示/違反報告)
まやや - 泣いちゃった。。ジャンの変装シーンってどういうことですか？この長編を描き切るなんて素晴らしいです！！ (2020年10月24日 16時) (レス) id: e7ac9c5abf (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - コットンキャンディーさん» コメントありがとうございます！こんなに長い小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。嬉しいコメントまで、ありがたいばかりです(泣)だいぶ前に書いた作品ではありますが、こうして読んでくださることに心より感謝です！ありがとうございました(T-T) (2020年5月8日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
コットンキャンディー(プロフ) - こんにちは。今更ながら読ませていただきました！この章では泣いてしまいました本当に。こんな小説を書けるなんてすごいです！この小説を書いて下さりありがとうございました！とても面白かったです！ (2020年5月6日 12時) (レス) id: 5295ad42ac (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ゆらさん» コメントありがとうございます！そんな風に泣いていただけるなんて…本当にありがとうございます！最後の終わり方はいろいろと悩んだので、そう言っていただけると嬉しいです(泣)この作品を読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年9月25日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
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