敗者達6 ―絶望か希望か ページ6
・
―――頼む、どうか…
血色の薄れたAの頬。
祈るような思いでリヴァイはその頬に静かに触れると、手の平でそっと包み込んだ。
伝わってきたのは……
―――…温かい…
Aの肌から伝わってくる確かな体温。
それを感じた瞬間、さっきまで凍てついていた胸の内が、氷を溶かすかのように熱を取り戻してゆくのがわかった。
「……っ…」
込み上げてくる感情を抑えきれずに、リヴァイは思わずAの身体を抱き寄せた。
よかった
本当によかった…
背中に回した腕に力が込もる。
腕の中のAはグッタリしたままで、目を開ける様子はない。
それでも、生きていてくれた、ただそれだけで今は……。
身体をゆっくりと離すと、もう一度確かめるようにAの頬に手の平を添えた。
『…最後かもしれないから、…もう一度だけ、キス…して……』
ついさっき、ここで別れた時のことが脳裏に蘇る。
絞り出すかのような、Aのわずかに震える声
自分を見つめる小さく揺れる瞳
頬を流れ落ちる涙
口づけた唇の愛しい感触…
一人で待つ間、どれだけ心細かっただろうか…
そう思うと痛いほど胸が締めつけられた。
「…待たせちまって、悪かったな…」
傷の様子を急ぎ確かめる。
幸いなことに傷口からの出血はそれ程ひどくないようだ。
だが、止血の為に足に巻いたスカーフも、Aに手渡したハンカチも血で真っ赤に染まっている。
その時ふと、Aの手の平の中に星型のキーホルダーが握られていることにリヴァイは気づいた。
まだ、Aが地下街から出てきて間もない頃。
二人で街へ出かけた際に自分が渡したこの小さな飾りを、お守りだ、とそう言って嬉しそうに見せていたAの姿を思い出す。
そのお守りが、少しは役に立ったのか…
『…大丈夫。私は守られなくても大丈夫なくらい強くなる。絶対に死んだりなんかしない。…だから…―――』
『…大丈夫。約束は守る。…そして、私は私の役割を果たす。いつも通りに』
『…大丈夫。絶対に約束は守る』
必ず生きて帰るという約束を、Aはこれまでずっと守ってきた
…そうだったな、A
お前は、強い
―――俺が、愛した女だからな…
「帰るぞ、A。お前と約束したとおり、一緒にな…」
リヴァイは傷ついた身体を両腕で抱え上げると、立体機動で宙を舞った。
必ず生きて共に帰る
その約束を果たす為に…――――
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berumanami0220(プロフ) - こんなに長く書き切ってくれてありがとうございました！すごく素敵なお話でした (4月6日 19時) (
レス) id: c0ff4540c3 (このIDを非表示/違反報告)
まやや - 泣いちゃった。。ジャンの変装シーンってどういうことですか？この長編を描き切るなんて素晴らしいです！！ (2020年10月24日 16時) (レス) id: e7ac9c5abf (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - コットンキャンディーさん» コメントありがとうございます！こんなに長い小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。嬉しいコメントまで、ありがたいばかりです(泣)だいぶ前に書いた作品ではありますが、こうして読んでくださることに心より感謝です！ありがとうございました(T-T) (2020年5月8日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
コットンキャンディー(プロフ) - こんにちは。今更ながら読ませていただきました！この章では泣いてしまいました本当に。こんな小説を書けるなんてすごいです！この小説を書いて下さりありがとうございました！とても面白かったです！ (2020年5月6日 12時) (レス) id: 5295ad42ac (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ゆらさん» コメントありがとうございます！そんな風に泣いていただけるなんて…本当にありがとうございます！最後の終わり方はいろいろと悩んだので、そう言っていただけると嬉しいです(泣)この作品を読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年9月25日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
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