この世界 ページ44
・
リヴァイの言葉に、エレンの瞳が弾かれたように見開く。
リヴァイはそれだけ言い残すと、立体機動でその場から飛び立った。
後はエレン次第だ。
このまま死ぬか―。
それとも、巨人化して戦うか―。
選択するのはエレン自身だ。
そのまま女型の姿を追う。
眼下に見えるのは、調査兵の仲間と、そして戦闘に巻き込まれた一般市民たちの血にまみれた無数の遺体。
悲鳴。叫び。泣き声。
目の前に広がる光景は、『死』ばかり。
――…人間は
いつだってそうだ
ガキの頃からそうだった
死はそこら中に転がっていた
今日生きていた人間が、明日にはもうこの世にいない――
それが当たり前の世界だった
それは地上に移ってからも同じ
大切なものは全て指の間をすり抜けてゆく
いつ失ってもおかしくない
同じ光景を、何度も目にしてきたはずなのに…
…なぁ、A
俺は、あとどれだけ繰り返せばいい
どれだけ仲間を死地に追いやればいい
どれだけ失えばいい
数え切れない程の屍を越え
お前の屍を越え…
俺は一体…何を――
自分は一体何を求めているのか、わからなくなる
それでも、ただ、一つだけわかること
忘れていないつもりだった
だが、俺は…お前と一緒にいた時間が幸せ過ぎて
いつの間にか、忘れちまっていたんだ
この世界は、いつだって、残酷であることを――…
女型の姿を視界に捉える。
風を切りながら、静かにブレードを引き抜いた。
もう、二度と逃しはしねぇ…
胸の痛みを押し隠すかのようにわずかに目を細めると、リヴァイはブレードを構える腕に力を込めた。
たとえ、この命と引き換えにしても――…
・・・・・・
リヴァイが立体機動で飛び立ってゆく姿を、エレンは半ば放心状態で見つめていた。
「―――…なんで……なんで…だよ…ッ」
言葉と一緒に口から赤い血が溢れ出す。
涙で視界が歪んでいた。
冷静なリヴァイの態度が、余計にエレンを苦しめていた。
どうしてそんなに冷静なのか。
だけど、それが嘘ではないことだけはわかる。
一番辛いのは、リヴァイだということもわかっている。
だが、混乱して頭がついていかない。
どうしてAさんが死ななければならない
どうしてみんな死ななくてはならない
一体どうして…
幸せになるはずだった
何の罪もない人達が…―――
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berumanami0220(プロフ) - こんなに長く書き切ってくれてありがとうございました！すごく素敵なお話でした (4月6日 19時) (
レス) id: c0ff4540c3 (このIDを非表示/違反報告)
まやや - 泣いちゃった。。ジャンの変装シーンってどういうことですか？この長編を描き切るなんて素晴らしいです！！ (2020年10月24日 16時) (レス) id: e7ac9c5abf (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - コットンキャンディーさん» コメントありがとうございます！こんなに長い小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。嬉しいコメントまで、ありがたいばかりです(泣)だいぶ前に書いた作品ではありますが、こうして読んでくださることに心より感謝です！ありがとうございました(T-T) (2020年5月8日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
コットンキャンディー(プロフ) - こんにちは。今更ながら読ませていただきました！この章では泣いてしまいました本当に。こんな小説を書けるなんてすごいです！この小説を書いて下さりありがとうございました！とても面白かったです！ (2020年5月6日 12時) (レス) id: 5295ad42ac (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ゆらさん» コメントありがとうございます！そんな風に泣いていただけるなんて…本当にありがとうございます！最後の終わり方はいろいろと悩んだので、そう言っていただけると嬉しいです(泣)この作品を読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年9月25日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
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