現実と選択 ページ43
・
エレンが掠れた声を絞り出す。
ごめんなさい、とでも言いたげな瞳。
おそらく、アルミンが言っていたことは当たっているのだろう。
古城での巨人化実験でわかったこと。
明確な目的意識がなければ、巨人化できない。
つまり、そこに迷いがあるということ。
戦うべきなのか、否か…。
この期に及んでまだそんな甘いことを言えるのは、コイツがガキだからなのか。
根っからの甘ちゃんのせいなのか。
いや、コイツは本当は…―――
「……ついさっき、Aが息をひきとった」
少しの沈黙の後、リヴァイは言葉を選ぶように、ゆっくりとそう告げた。
瞬間、エレンがその大きな目をさらに大きく見開く。
「な…ッ何…言って…」
「…………」
「…こんな時に…っ冗談は…やめてくださいよ…ッ」
エレンは必死に声を絞り出した。
誤魔化したくて、笑い飛ばしたいとさえ思うのに、その声は震えていた。
冗談だと言って欲しかった。
嘘だと言って欲しかった。
だが、リヴァイのどこまでも冷静な瞳が、それが真実であることを突きつける。
「……こんな冗談が言えると思うか？」
「ッ…嘘です！…そんなの……っ…嘘…だ…」
みるみるエレンの瞳に涙が溢れる。
わかっている。
リヴァイが冗談でそんなことを言うはずがない。
こんな嘘を言うはずがない。
頭ではわかっているが故に、拒絶反応を起こしたように手足が冷たくなり、全身から一気に血の気が引いた。
身体中が痛くて、もうどこが痛いのかもわからない。
―――Aさん…が……
ウソだ
ウソだ
そんなのウソだ…！！
信じたくなくて、そればかりが頭の中をぐるぐると回る。
混乱したままのエレンに、リヴァイは静かに言葉を続けた。
「…これが現実だ、エレン。辛いかもしれねぇが、全部現実だ。…Aがもうこの世にいないことも。――――Aを殺したその敵が、テメェの見知ったヤツってこともだ」
「……ッ」
リヴァイの言葉に、音もなくエレンは息を飲み込んだ。
殴られたわけではないのに、頭を思い切り殴られたような感覚がエレンを襲った。
「…エレン、そのままここでくたばるつもりか？」
リヴァイはエレンの側に膝をつくと、改めてエレンの瞳を真っ直ぐに見据えた。
そして、静かに言った。
「選べ…エレン。そのままここで野垂れ死ぬか、最後まで戦うか…だ」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1870人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「進撃の巨人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
berumanami0220(プロフ) - こんなに長く書き切ってくれてありがとうございました！すごく素敵なお話でした (4月6日 19時) (
レス) id: c0ff4540c3 (このIDを非表示/違反報告)
まやや - 泣いちゃった。。ジャンの変装シーンってどういうことですか？この長編を描き切るなんて素晴らしいです！！ (2020年10月24日 16時) (レス) id: e7ac9c5abf (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - コットンキャンディーさん» コメントありがとうございます！こんなに長い小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。嬉しいコメントまで、ありがたいばかりです(泣)だいぶ前に書いた作品ではありますが、こうして読んでくださることに心より感謝です！ありがとうございました(T-T) (2020年5月8日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
コットンキャンディー(プロフ) - こんにちは。今更ながら読ませていただきました！この章では泣いてしまいました本当に。こんな小説を書けるなんてすごいです！この小説を書いて下さりありがとうございました！とても面白かったです！ (2020年5月6日 12時) (レス) id: 5295ad42ac (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ゆらさん» コメントありがとうございます！そんな風に泣いていただけるなんて…本当にありがとうございます！最後の終わり方はいろいろと悩んだので、そう言っていただけると嬉しいです(泣)この作品を読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年9月25日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
