冷たい口づけ ページ33
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リヴァイが呟いた疑問符に、ハンジは静かに口を開いた。
「…あの時、Aが持っていたものだよ。救護班の子が偶然見つけてね。私が預かっていた。―――…黙っていて、ごめん。Aが目を覚ましたら…本人に、直接返そうと思っていた。そうなれば、リヴァイに渡す必要はないと思って。……そうなって…欲しかったよ」
最後の方は、小さく声が震えていた。
リヴァイは無言のままハンジからその手帳を受け取ると、ゆっくりとそのページを開いた。
パラパラと何枚かをめくり、そして手を止める。
一瞬、わずかにだけ目を見開いた。
だが、それ以上表情は変えず、リヴァイはまた静かに手帳を閉じると、それを自分のジャケットの内ポケットへとしまった。
「…もう…時間だな」
小さく呟いたリヴァイはふらりと椅子から立ち上がると、手を伸ばし、もう一度Aの白い頬へとそっと触れた。
そのまま指先を滑らせ、髪に触れると手櫛で優しく
流れるような髪の毛の一本一本が、指の隙間をさらさらと滑り落ちてゆく。
ただ、眠っているようにしか見えないのに、その魂は確かにここには存在しない。
震えそうになる指先を抑え、胸の上で組まれた手の甲に、手の平を重ねた。
温もりを失った肌の冷たさに、わかっているはずなのに一瞬だけ戸惑う自分がいる。
リヴァイはそのまま顔を寄せると、ハンジがいることにも構わず、Aの唇へとそっと口づけを落とした。
胸を刺す痛みも、凍てつくような悲しさも虚しさも、全てを内に抱え込んだまま…。
ゆっくりと唇を離すと、その愛しい姿を瞳に映す。
「…A、行ってくる。…ここで、待っててくれ」
静かにそう言い残すと、リヴァイは踵を返した。
「……リヴァイ、大丈夫…なのかい？」
背を向けたリヴァイに、ハンジはそう聞かずにはいられたかった。
「……行かないわけには、いかねぇだろ」
視線は合わせず、押し殺すようにそう答えたリヴァイに、それ以上何も言えなくなる。
刺すような言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているかのようで、そこにはわずかな殺気さえも感じるかのようだった。
「……わかった。エルヴィンは先に行って待ってるよ」
「…あぁ。…着替えたらすぐに行く」
リヴァイが部屋を後にする。
ハンジは複雑な思いでベッドの上で眠るAへともう一度視線を落とした。
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berumanami0220(プロフ) - こんなに長く書き切ってくれてありがとうございました！すごく素敵なお話でした (4月6日 19時) (
レス) id: c0ff4540c3 (このIDを非表示/違反報告)
まやや - 泣いちゃった。。ジャンの変装シーンってどういうことですか？この長編を描き切るなんて素晴らしいです！！ (2020年10月24日 16時) (レス) id: e7ac9c5abf (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - コットンキャンディーさん» コメントありがとうございます！こんなに長い小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。嬉しいコメントまで、ありがたいばかりです(泣)だいぶ前に書いた作品ではありますが、こうして読んでくださることに心より感謝です！ありがとうございました(T-T) (2020年5月8日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
コットンキャンディー(プロフ) - こんにちは。今更ながら読ませていただきました！この章では泣いてしまいました本当に。こんな小説を書けるなんてすごいです！この小説を書いて下さりありがとうございました！とても面白かったです！ (2020年5月6日 12時) (レス) id: 5295ad42ac (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ゆらさん» コメントありがとうございます！そんな風に泣いていただけるなんて…本当にありがとうございます！最後の終わり方はいろいろと悩んだので、そう言っていただけると嬉しいです(泣)この作品を読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年9月25日 0時) (レス) id: d224b33113 (このIDを非表示/違反報告)
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