人類最強と私の恋愛事情5―未知への挑戦―【進撃】【リヴァイ】

それぞれの思い1　　―涙の温度 ページ38

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Aは自室に戻り、椅子に座ると、無意識にリヴァイに叩かれた頬に片手を添えた。
そのまま机に伏せる。

いつの間にか涙が溢れていた。



何の涙かわからない

悲しいのか、悔しいのか、情けないのか…


いや、その全部だろう


リヴァイに本気で怒られた

きっと、失望された――


そう思うと、さらに涙が溢れる。



確かにあの時、考えるよりも先に、私はエレンの元へ向かっていたかもしれない

エレンのことが心配で、とにかくエレンのところに行かなければ、と…


リヴァイは自分の軽はずみな行動に対して、怒っているのだろう


危険な状況下において、冷静な判断を下す
兵士において一番重要な部分を欠いていた、――そういうことか…


そして、もし仮にエレンが暴走した場合に、…エレンにブレードを振り下ろすことができるのか

エレンの命がかかっている状態で

まわりの状況を判断し、それを天秤にかけ、…決断を下せるのか、と



これまでも、壁外で何度も過酷な状況は経験してきた

様々な状況下で、仲間の命を救うことができず、時にはそれを諦める場面もあった
――全てを救うことはできない


それに、一瞬の気の迷いが、今度は自分の命を落とすことにつながる
そんな狭間で、仲間の死を何度も目にしてきた


でも、壁外で戦う相手は巨人だ
なんの躊躇もなく、ブレードを振り下ろせる


だけど、…エレンは―――違う

巨人化しても、エレンはエレンだ


エレンにブレードを振り下ろす…

つまり、『人間』に、―――刃を向ける



今までとは違う



わかっていた
わかっていたつもりだったのに…



「…情けない…ね……」



一人小さく呟く。


私はやっぱり何もわかっていなかった


守りたい一心で
何一つ『覚悟』ができていなかった


状況を冷静に判断し選択する『強さ』、物事を天秤にかけ決断できる『強さ』、そして、必要に迫られた時『捨てる』ことのできる『強さ』……


リヴァイがこれまで兵士長として、捨て去り、背負い、決断し続けてきた重みを、理解しているつもりで、自分には何一つ身についていなかったということか…



Aは机に伏せたまま、自分の手を広げ、その手の平をじっと見つめた。


この手でできること、決断できること、そんなものはわずか一握り…

でも、あの人の為に、自分はもっと強くならなければ…

強く―――なりたいのに……


頬を伝ってゆく涙の温かさが、余計にAの胸を締めつけていった…。




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