公正 ページ38
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「貴方もこの世界に残らない?」
「…この世界?」
「ここでは全てが美しいわ。平等で公平。」
平等で公平…。
押さえつけられているせいで関節が痛い。
何とか彼女の言葉を反芻しながら、確かにね、と笑った。
「…でも、公正じゃないよね。」
「…え?」
「確かにこの世界は平等だよ。老若男女問わず全員に死が降り注ぐ。怪我をして動けないおばあちゃんも、何も分からずただ泣くだけの子供も、赤ちゃんでさえもね。」
リサの声が聞こえない。
何が美しいの?何が綺麗なの?
薄汚れ緑に侵食され始めている渋谷を見て、彼女は何も思わないのだろうか。
「ねえ、リサ。気づいてる?もう生き残っているのは動ける青年たちだけ。コウタくんも運良くここまで残ってきたけど、子供なんてどこにも居ないでしょう?」
「…それが何よ」
「殺されたのよ全員。それって、本当に美しい?」
私は見た。
チシヤと別れここに来る途中、お腹の大きな妊婦が自決しているのを。
食べれる物も無く、理不尽にこんな世界へ放り込まれた何も罪を犯していない人達。
「ただ暖かい世界で、大切な人と過ごしたかっただけの人が…。どうして殺されなきゃいけないの?」
「弱い方が悪いのよ」
「本当にそうかな?力を持った殺人者が残り、優しい人が死んでいく。そんな世界美しいの?」
…黙れ。
小さな声が聞こえる。
偽善者ぶるな、どうせお前だって自分が死の淵に立たされたら他人を蹴落としてでも生きたいくせに、と。
「私は貴方達のチームには入らない。ボタンなんて押してもらわなくたっていい。コウタくんが、弱い立場の子供が死ぬのを黙って見てるくらいなら…!」
「うるさい!」
ドン。
何が起こったのか分からなかった。
クルクルと回る視界、痛む背中。
ボーッと意識が飛びそうな中、上で仁王立ちをする女王様の声が微かに聞こえる。
「…ゲームが終わるまでそこで寝てなさい。」
突き落とされたんだ。
長い階段から投げられた事を悟ると同時に、私の意識はブラックアウトした。
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みりん(プロフ) - ゆめさん» ゆめさんありがとうございます!長ったらしい小説家とは思いますが、ここまで読み進めていただいたことマキタにありがとうございます!ꈍ .̮ ꈍ メッセージの方でパスワードを送らせて頂きますね! (2023年4月13日 20時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 初めまして!みりんさんの作品全て読まさせて頂きました! どれもとても素敵な作品で、出会えた嬉しさでいっぱいです! これからも陰ながらですが、応援させて 頂きます!お時間のある時に0の方のパスワードを 教えていただけると幸いです! (2023年4月13日 16時) (レス) id: 23764cc589 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はるさん» はるさん、嬉しいお言葉ありがとうございます…!(*ᴗˬᴗ) EP0のパスワードの方、メッセージにて送らせて頂きますね! (2023年4月12日 1時) (レス) @page42 id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - はじめまして!素敵な作品を拝見させていただきありがとうございます!文章力が素晴らしくて凄く感情移入しました( ꈍᴗꈍ) 宜しければEP0の方も拝見させて頂きたいです!お時間ある時によろしくお願いします! (2023年4月11日 18時) (レス) @page40 id: 18e6227b50 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - ありがとうございます!︎おふたりとも、メッセージの方にてパスワードを送らせて頂きますね!ここまで読んでくださり嬉しい限りです(^_^*) (2023年4月9日 22時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月21日 2時