序章 少女の涙 参 ページ3
少女が眠っている間に、警察と探偵が来ていた。
メイドは警察に連行されていった。
残ったのは、所謂鑑識課の方々と探偵の二人。
「…あ、の」
気まずい空気をどうにかしようと、少女は必死に声を発した。
そもそも彼女は、探偵と名乗る男たちが何者なのかよく分かっていない。
「ん?あぁ、自己紹介がまだだったな。私の名は福沢諭吉。
今日は元々、主のご両親から依頼を受けていた」
最初に答えたのは、古風な緑色の着物を着た男性だった。
少し無愛想ではあるが、優しそうな人だ。
少女の抱いた純粋な感想だった。
「僕もするの?僕はかの有名な名探偵、江戸川乱歩さ!」
胸を張って、えっへん、とでも言いたげな少年は飴を食べだした。
一ついるか、と言われ思わず受け取ったが、少女は甘い飴を食べる気にはなれなかった。
「食べないの?もったいないなぁ。
まあ、あの惨劇の後じゃ食欲失せるのも分かるけど!」
軽く笑い飛ばす乱歩に対して、少女の顔は引きつっていた。
それは福沢も同じだったのだが。
確かに、客観的に見てこの家の状況は惨劇と言っても過言ではない。
だがそれを普通、親族の前で言うだろうか。
この人はおそらく、頭の捩子が幾つか外れている。
少女は自分に、言い聞かせた。
「一つ、聞くけど」
乱歩の問いに、少女は首を傾げた。
「君は…どこまで知っている」
全てを見透かしたように、乱歩の翡翠色の瞳が少女に刺さる。
この時点で、もう知っていたのだ。
あのメイドは二人を殺してなんかいない。
両親を殺したのは___
「私が、異能力者であること…ぐらい」
「ふぅん、あっそ。それならいいけど」
興味無さげに玄関へと向かう乱歩の背中を見て、少女は息を飲んだ。
きっと誤魔化しきれていない。
彼は、名探偵なのだから。
脈打つ心臓の音を聞きながら、少女はため息を吐いた。
自分は、酷い人間だと。
「ご令嬢、お名前は」
隣に立つ福沢に、名を問われた。
「私は、桜庭A」
「ならばA、これからどうなさるおつもりですか」
両親が他界し、独り身となった少女__Aは、もう桜庭家の令嬢ではない。
ならばどうするべきか、今後について考えた。
当初は、この街の役に立ちたいという目的があった。
だが、今の少女では力不足なのも変えがたい事実だった。
「旅…旅を、しようと思う。世界中を回るお金は、あるはずだから」
福沢は少しだけ口角を上げると、Aの頭を撫でて去っていった。
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名無しの遊霊 - 僭越ながら復活を果たしました、名無しの遊霊です。また自分なりに良いものが書けるよう精進していきますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年8月26日 3時) (レス) id: 4dce8b1b93 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの遊霊 - 天然石。さん» ありがとうございます!天然石。さんも受験お疲れ様でした!私のファンなんていないと思うのできっと大丈夫ですよwww (2019年3月8日 14時) (レス) id: 6423abd6f3 (このIDを非表示/違反報告)
天然石。(プロフ) - 受験お疲れ様でした。1500hitおめでとうございます。どれだけの人が見ていても私がいちばんのファンでありたい。と思いました。 更新待ってます (2019年3月5日 15時) (レス) id: a11c4ee981 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの遊霊 - 天然石。さん» そうでしたか?表現の仕方は自分でも気が付きませんでした!というかここでも遂に敬語外すようになったみたいですねwwwありがとうございます。これからもなる早で頑張らせていただきます。 (2018年9月19日 18時) (レス) id: 486de41c9b (このIDを非表示/違反報告)
天然石。(プロフ) - メールに送ろうと思ったけど気力がないのでこちらへ なんだか表現の仕方がガラッと変わった気がする…?情景描写がとても好きです舞ちゃんが可哀想で仕方がない…鏡花ちゃんが好きじゃなかったらスマホ投げ飛ばしてたね…危ない危ない (2018年9月17日 18時) (レス) id: a11c4ee981 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織するめ | 作成日時:2017年12月9日 10時