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【episode 31】#You ページ31

「二度も私を守ってくださり、ありがとうございます。
感服いたしました、お姉さまと呼ばせてくださいませーっっ!!」


「っゔ」


同じ少女ではないような先程とは違う、力強い抱擁。
い、息ができない…

だいたいお姉さまって…


「おい、ナオミ…」


「ああーん、兄様ぁ!
大丈夫でしたかぁぁ!?」


「痛だっ!?」


近づいてきた爆弾魔に勢いよく抱きつく少女。
本当にどういうこと!?


「いい痛い、痛いよナオミ、折れる折れる
って云うか折れたァ!!」


もう訳がわからない。
私は助けを求めるように敦へと目を向ける。
敦も驚きを隠せないようだ、目が死んでいた。
そっと近づいて、腕を掴んで揺すると我に帰ったように私を見つめた。


「恨むなら太宰を恨め。
若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め」


「そう云うことだよ、敦君。
つまりこれは一種の入社試験だね」


入社試験?
今のが?こんな大掛かりな入社試験?
ほ、本当に敦をこんなところに任せても大丈夫なのだろうか…


「その通りだ」


聞き覚えのある声に振り返るとそこには武装探偵社の社長さんがいた。


「…社長さん、」


「え、A知ってるの…?」


「えっと…」


なんて言ったらいいかわからず、言葉を探しているうちに社長さんが口を開いた。


「そこの太宰めが"有能なる若者がいる"と云うゆえ、その魂の真贋試させてもらった」


「君を社員に推薦したのだけど如何せん君は区の災害指定猛獣だ。
保護すべきか社内で揉めてね。
…で、社長の一声でこうなった、と」


「で、社長…結果は?」


私は息をこくりと飲み込んだ。
社長さんは目を瞑るとこう言った。


「太宰に一任する

……そして」


私の目の前で来ると先程と同じように私の頬へと触れた。


「見かけによらず勇敢であった。
葉山A、歓迎しよう」


そう一言だけ言うと、くるりと踵を返して部屋へと戻っていく。
私は唖然とまた社長室の扉を眺めていた。


歓迎、する…?
なにを?なにが…?


「合格だってさ」


「つ、つまり…僕に斡旋する仕事っていうのは」


太宰は顎に手を当ててくすりと笑う。

敦は力が抜けたのか、床にぺたりと座り込んでしまった。


「ぼ、僕たちを試すためだけに…こんな大掛かりな仕掛けを?」


「この位で驚いてちゃ身が保たないよ?」


太宰はにこり、と微笑んだ。

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十六夜(プロフ) - 胡蝶さん» コメントありがとうございます。励みになります。中也さんの登場が私自身も待ち遠しいです^ ^ (2018年3月10日 11時) (レス) id: e6ba942cc6 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 凄くおもしろかったです。夢主ちゃん、中也さんと気が合いそうですね。これからどんな展開になっていくのか楽しみです。 (2018年3月10日 0時) (レス) id: 7857e3d4af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十六夜 | 作成日時:2018年2月27日 22時

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