昇降口へ(後編) ページ9
平田 洋介「そっか...」
私の答えを聞いた平田くんは、少し考えたあと 微笑んでから
平田 洋介「それなら...仕方ないね。」
諦観したように言った。
「ご...ごめん、平田くん......」
平田 洋介「ううん。僕の方こそ...君を困らせてしまってごめんね」
「そんなこと...。」
「...えっと......また、前みたいに仲良く話そうよ!」
「平田くんと気まずいまま 学校生活を送りたくないし...!」
平田 洋介「...そうだね。そうしよう」
平田くんの返事を聞いた私は 今日のことはなかったことにしてくれるものだと思っていた。
あの日までは──。
いつもの放課後、私は以前のように 平田くんと世間話をしていた。
「そういえばこの前の試験ね、賞賛表が1票以上入ってて 嬉しかったんだ!」
平田 洋介「もしかして 1票も入ってないと思ってたの?」
「うん。だって私、クラスじゃあんまり目立たない存在だったから......驚いちゃった」
「......それに私、納得しきれないところがあって...それが 批判票が1票も入ってなかったことについてなんだけどね...。」
平田 洋介「...どうして納得できなかったのかな?」
「だって...平田くんはみんなの人気者で、私が平田くんに言ったあの日のこと みんな知ってたのに...」
「誰も私に批判票を入れなかったから......私のこと、恨んでないのかなって思って...」
平田 洋介「それだけのことで、Aさんが批判されるのは筋違いだ。」
平田 洋介「だから...君までその件について 気にする必要はないよ」
「え...私"まで"って、どういうこと...?」
平田 洋介「...みんなも 君を批判するようなことを言っていたから、僕なりの方法で解決したんだ」
「(あ...だから試験で投票したとき、みんな よそよそしかったの...?)」
平田 洋介「みんな僕に賛成してくれて Aさんに賞賛票を入れてくれたんだよ」
私は彼の 狂気的とも取れる笑みに、初めて恐怖心を抱いた。
平田 洋介「安心して。君を退学になんかさせたりしない」
平田 洋介「僕がいる限りは、絶対にそんなことさせない。」
平田 洋介「だから...これからも僕と 今まで通り、友達でいてほしいな」
決死の思いのような眼差しで見つめる彼に、私はそっと頷くしかなかった──。
【親切すぎる人格者】
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作者名:CRONE | 作成日時:2024年3月11日 23時