昇降口へ（前編） ページ8
「昇降口に行こう」
そう言った私は、昇降口で待っているという彼のところへ向かった。
昇降口へ行くと、彼は下駄箱の近くで待っていた。
「平田くん、メール見たよ！遅くなってごめんね」
彼の近くに行きながらそう言うと、彼はいつもと違った笑顔を見せた。
平田 洋介「大丈夫だよ。来てくれてありがとう、Aさん」
平田 洋介「今日は君に話したいことがあって 呼んだんだ。」
「うん。どうしたの？」
彼の反応を確認しながらも そう訊ねると、
平田 洋介「ここじゃ人がいつ来るか分からないから、噴水の近くまで行かない？」
彼はその答えを聞くために 微笑んだまま私をじっと見つめた。
「分かった、行こっか」
噴水の前にあるベンチに私たちは腰をかけると、最初に平田くんが口を開いた。
平田 洋介「これまで、Aさんには本当にお世話になったと思ってるんだ」
平田 洋介「いつも僕を支えてくれたでしょ？」
「そんな...大げさだよ。私はただ、平田くんの隣で話をしていただけだし...」
平田 洋介「...でも、そのことに 僕は救われたんだ」
「あはは...急にどうしたの？ちょっと照れちゃうよ」
平田 洋介「君はいつもそう言って 笑ってくれるよね」
平田 洋介「それが、僕にとって どんなに心の支えになっていたか......」
平田くんとは たまたま関わる機会があって、そこから互いのことを話したり 他愛のない話をする関係だった。
そんないつもの平田くんらしくない様子に、少し戸惑っていた。
「えっと...私にとっても、平田くんは唯一気心の知れた友達だと思ってるよ」
平田 洋介「...君は いつも僕にほしい言葉をくれるよね」
平田 洋介「それが嬉しくって......今日、決心がついたんだ」
「決心って...？」
平田 洋介「Aさんは そう思ってないかもしれないけど、君にこのまま気持ちが伝わらないのは嫌だから...言わせてほしい」
「(これってもしかしなくとも......)」
平田 洋介「Aさん、僕は君のことが──」
「待って。平田くん」
「...その先は言わないで」
つい自然と出てしまった言葉に、平田くんは
平田 洋介「え...」
ショックを受けたような表情で言った。
「(多分...平田くんと 今までのように話せなくなる気がする......)」
平田 洋介「...高望み、しすぎちゃったかな......」
「違っ...そういうことじゃなくてね...」
「私は...今の関係のままがいいと思って......。」
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作者名：CRONE | 作成日時：2024年3月11日 23時
