放課後の彼 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:22 hit、合計:2,023 hit

─綾小路side─（前編）ページ4

最初は、顔見知り程度だった。

櫛田桔梗「紹介するねっ、この子は Aちゃん！入学式の時に、仲良くなった子なの」

櫛田がAを教室に連れてきた日、オレはクラスのやつらとどう接するかを考えていた。

櫛田桔梗「あの人は堀北さん、あの人は綾小路くんだよ！」

「あえっと...堀北さん、私はAって言います。桔梗ちゃんの友達で......これからよろしくね」

Aはそう言ったあと堀北に握手を求めようとしたが、堀北はそれをかわして本に視線を落とした。

その堀北の態度を見たAは困ったように微笑んでいた。

そのあと、Aはオレの目の前に来ると

「綾小路くん、私はAって言います。桔梗ちゃんと友達で......これからよろしくね」

そう言って慣れない手つきでオレに握手を求めてきた。

オレは拒むことなく、握手をかわすと Aは嬉しそうに頬を綻(ほころ)ばせた。

──その第一印象で、オレはAはいいやつだと思った。

Aとの接点はそれだけでなく次の日も、また次の日もこの教室に来ては、話をして帰っていく日々を送っていた。

ある日の昼休憩、オレはいつものように一人で食堂のメニューを見ていると

「あ、綾小路くん！」

聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、オレはそっちに顔を向けると初めて顔合わせをした時よりも打ち解けた方なのか、Aはオレに笑顔を見せ近づいてきて言った。

「こんにちは今からお昼ご飯？」

綾小路清隆「ああ。そういうAもか？」

「うん！あ、そうだ......よければ一緒にお昼ご飯食べない？」

男子に昼食を誘われることがなかったオレは、まさか女子に誘われるとは思っていなく拍子抜けしたまま、口を開いた。

綾小路清隆「...いいのか？」

「？もちろん！誘ったのは私だし、遠慮する必要ないよ」

綾小路清隆「...それなら、お言葉に甘えて。」

「ふふ、うん！」

屈託のない笑顔を向けてくれるAに、気づけばオレは言葉を発していた。

綾小路清隆「Aは...いいやつだよな」

「え...そう、かな...？」

綾小路清隆「ああ。オレみたいなやつにも、こうやって声をかけてくれるし...」

「それは...私が綾小路くんと一緒に、ご飯を食べたかったからだよ」

そう言うAは控えめに微笑んでから

「じゃあ行こうか！」

と笑顔で言い続け、オレの腕を引っ張った。