─龍園side─(前編) ページ16
最初は ちょっと遊んでやって、すぐ捨てようと思っていた。
このクラスに、俺に反抗心を持つやつや素直に従うやつがいないわけじゃなかった。
だから──俺とぶつかってきたやつは 俺にとっちゃ印象にも残らないもんだと思った。
「す...すみません!前を見ていなくてっ!!」
龍園 翔「あーあー...痛ェなァ......」
「えっ、怪我させちゃいましたか!?ごめんなさい!どこですかっ?見せてください!」
そいつは涙目になりながら俺を気にかける、不思議なやつだった。
龍園 翔「そうだなァ...肩を怪我しちまったかもしんねェ」
わざと自分の肩を指さしながら言うと、顔を青ざめさせたそいつは 慌てて俺に近づいてきた。
そのときは もっと焦る顔が見たいがために、そいつの腕を掴んで引き寄せてやった。
「へっ...!?あ あの...っ??」
龍園 翔「どう責任取ってくれる?」
龍園 翔「(ここで...逃げるか命乞いをするか......。)」
「え、ええと......怪我が治るまで 側にいます!」
龍園 翔「(...おもしれェ)」
予想外の返答に、こいつをオモチャにすることに決めた。
それから 数週間立った今──Aはまだ、俺の側にいた。
ありもしない怪我のために 毎日俺の教室に来た。
龍園 翔「(律儀っつーより、バカがつくほどの真面目だな)」
だが、不思議と悪い気はしなかった。
俺もAが側にいることが 当たり前のことだと思っていた。
あの日までは。
龍園 翔「(なんで来ねェんだ、あいつ...)」
昼。いつも教室に来るはずのAの姿がいつまで経っても見当たらず、仕方なくあいつの教室に向かったとき......
男1「おい見たか?あいつのマヌケな顔...」
男2「見た見た!俺たちに転ばされたともしらず、状況がわからないまま 無言で立ち上がるところ!」
男1「あれはケッサクだったなぁ!だからこそ いじめがいがある!」
男2「な!次はどうするー?」
男1「階段から突き落とそうぜ!」
男2「おいおい...見つかったらどうするんだよー」
龍園 翔「(...くだらねェ)」
男二人の横を通り過ぎ、Aの教室につくと そいつはいつも通りの笑顔で俺を見た。
「ごめんね龍園くん!教室まで来てもらって...」
龍園 翔「...おい、その足はどうした?」
「あ、これは...ちょっと転んじゃって!」
龍園 翔「転んだだと...?」
「で...でも大丈夫だよ!?こんなの放っておけば治るからっ」
Aの笑顔とは裏腹に、俺は今 笑える余裕はなかった。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:CRONE | 作成日時:2024年3月11日 23時