気まぐれウツボとネコザメちゃん (ページ44)

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フロイド

優しいソプラノの声で呼ばれた。
ずっとずっと、その声で呼ばれるのを待っていた

駆け出した足は情けなく床にへたりこんで

瞳の奥が暑くゆらゆら視界が滲んでいく。

優しい声で「おはよう」って微笑むフラーラは綺麗で儚くてオレがつけた尾ひれの痛々しい傷まで綺麗に見えた。

『心配かけてごめんね』

震えた声で何か言ってるけど、それどころじゃないんだ今は
フラーラが元の姿に戻ったあの日からずっとずっと不安でしょうが無かった。

怖かった。

どうしようもなく

怖かった。

二度と目を覚まさないかもしれない。

泡になって消えてしまうかもしれない。

もう触れても、優しく撫でてくれないかもしれない

これは夢なの？
夢なら覚めないでお願い。
このままフラーラと笑って話せる世界に居させて。

『フロイド』
『怖かったわよね……ごめんなさい。でもね安心して？まだ魔法薬は飲めないけど、貴方の前から居なくなったりしないわ』

フ「ほんとに……？」

『ええ、また後で眠ってしまうけど、貴方のそばから居なくならない』

フ「やだぁ！やだよ！！なんで、そんなこと言うの……」

『アズールの対策ノートができたら、戻ってくるわそれまで……お願い』

ヤダよ

顔をあげた
水槽の前で膝を着いて泣いてるオレに合わせて、分厚い水槽の壁に手をついて、泣いてるフラーラがそこに居た。

なんで、なくの
『私もフロイドと離れるのは寂しいのよ』

ポロポロ流れる涙は結晶化していく。
あ……人魚の涙……

「きれぇだね」
『ふふ、綺麗ね』

『アズールジェイドフロイド少しだけまた眠るからその前に気休めだけどおまじないよ』

人魚の祝福……
災いからその人を助けて幸福を運ぶ歌。
人魚だったら誰でも知ってるおまじないで、よく歌われる。

フラーラか歌うと、魔力が湧いてくるんだよな…
傍にいるみたいだ。
何か大きなことがあるとよく歌う。
ガレッジの入学式の時もちょっとしたイベントの時も。

きっとずっと何かある度に歌ってくれる。

でも、いつもフラーラは危なっかしい。
面倒くさがりのくせに色んなところに首を突っ込む
急にやる気になったと思うとすぐ寝るし。
仲間のことばっかりで自分のことは大事にしようとしない。

そんな彼女を守りたい。
守れるかな……？
守るよ。
約束したんだ。

オレがつけた尾ひれの傷。
もうそれ以上増やさないように。
フラーラのそばに居るって決めたんだよ。