名を付けるならなんと呼ぶ【ONEPIECE】 (ページ35)

今日:7 hit、昨日:33 hit、合計:61,144 hit

．ページ35

「……聞かねぇのか」

なにを、とは言わなかった。
でも、Aはうーん、と少し考える素振りを見せたあと、

「……まだお互い信頼した訳じゃないでしょう？共闘といっても、背中を預けて戦うなんて事はしないと思いますし。今はそれでいいです」

あからさまな、他人と距離を置いているような態度。
聡明さがそうさせるのか、其れとも。

……語られぬ少女の過去を勝手に想像してしまった事を後悔したのは、ロー自身が、そうされるのを嫌うから。
一瞬想像してしまった闇に、心の奥底に言い知れぬ感情が広がった。

そんな中、あぁ、と思い出したように気の抜けたようなAの声が響いて

「……でも、1つお願いがあって」

と切り出した。
何事かと思って続く言葉を待つ。沈黙。
目線で続きを促しても唇をきゅ、と結んだままのAに、態々「なんだ」と聞き返して言葉を促すと、
Aはゆらりと赤を動かして、ほんの少し口ごもったあと、気まずそうに睫毛を伏せた。

「あのー、服を、返して貰えないでしょうか」

…あぁ、そういや忘れてたな。と、
思考の外からやってきた話題に面を食らう。

年上の男相手に堂々と話していたさっきの態度とは打って代わり、もごもごとバツの悪そうな顔をするAの顔は、年相応の少女のそのものだった。