検索窓
今日:11 hit、昨日:28 hit、合計:61,541 hit

ページ36

「あれは随分血で汚れてた上に穴も空いてた。いくら洗っても着れたもんじゃねぇぞ。」

「…………ですよね」

「因みに着替えさせたのも俺だ」

「っ!わ!……わかってます……言わなくても……」

羞恥はあるのだろうが、仕方ない状況だったと理解しているらしい。それ以上の文句も何も言ってこない。だが、必死に恥ずかしさを隠そうとする態度は、何だかいじらしい。

「あの、本当に申し訳ないのですが、……服をお借りできないでしょうか」

「ソレ以外ねぇ、な」

男一人旅でそんなに何着も何着も服を持っている方が珍しいだろ、と言うと、それも納得したのか
うう、と項垂れるだけだ。

「…お金は払います、代わりに何か買って来てもらうことは……できませんか……」

「俺に女物の服を買えと?」

「……」

そう返すと、Aは観念したみたいに黙った。
まぁたしかに、明らかに男物のシャツを来ている少女、というその出で立ちは、彼女からしたら恥ずかしいのだろう。

実際、その姿は確かに……。
男の、所有欲だとか庇護欲だとか、情や欲を誘いそうな風貌ではある。
……実際、俺自身何となくその様子は悪くねぇなとすら思ってしまっている節はあった。


「その格好が不満か?」

「……まぁ、でも服を借りられただけ有難いです。日中にあんな血塗れの服で外に出たら、騒ぎになるでしょうし……」

「ふん、よく分かってんじゃねぇか、なら我慢するんだな」

「ま、宿までですしね……」

「はっ、別にそのままで良いじゃねぇか。俺は悪くないと思うが」

笑ってやると、Aは呆れた、と言わんばかりにように肩を竦める。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
166人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:幸せうさぎ | 作成日時:2023年2月10日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。