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「あれは随分血で汚れてた上に穴も空いてた。いくら洗っても着れたもんじゃねぇぞ。」
「…………ですよね」
「因みに着替えさせたのも俺だ」
「っ!わ!……わかってます……言わなくても……」
羞恥はあるのだろうが、仕方ない状況だったと理解しているらしい。それ以上の文句も何も言ってこない。だが、必死に恥ずかしさを隠そうとする態度は、何だかいじらしい。
「あの、本当に申し訳ないのですが、……服をお借りできないでしょうか」
「ソレ以外ねぇ、な」
男一人旅でそんなに何着も何着も服を持っている方が珍しいだろ、と言うと、それも納得したのか
うう、と項垂れるだけだ。
「…お金は払います、代わりに何か買って来てもらうことは……できませんか……」
「俺に女物の服を買えと?」
「……」
そう返すと、Aは観念したみたいに黙った。
まぁたしかに、明らかに男物のシャツを来ている少女、というその出で立ちは、彼女からしたら恥ずかしいのだろう。
実際、その姿は確かに……。
男の、所有欲だとか庇護欲だとか、情や欲を誘いそうな風貌ではある。
……実際、俺自身何となくその様子は悪くねぇなとすら思ってしまっている節はあった。
「その格好が不満か?」
「……まぁ、でも服を借りられただけ有難いです。日中にあんな血塗れの服で外に出たら、騒ぎになるでしょうし……」
「ふん、よく分かってんじゃねぇか、なら我慢するんだな」
「ま、宿までですしね……」
「はっ、別にそのままで良いじゃねぇか。俺は悪くないと思うが」
笑ってやると、Aは呆れた、と言わんばかりにように肩を竦める。
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作者名:幸せうさぎ | 作成日時:2023年2月10日 10時