名を付けるならなんと呼ぶ【ONEPIECE】 (ページ2)

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Ⅰ 懐古する嗤笑ページ2

懐古する嗤笑┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
かいこするししょう

空から振り落ちている白い綿のようなそれは、雨とはまた違うスピードで、ふらふらと揺らめく軌道を描いて降り積もる。

地面を蹴って前へと体を押し進めれば、私の生み出した勢いに撒かれて、ふわりと白い結晶が大きく舞い上がる。ほんの少し風を起こせば簡単に舞い散る雪は、まるで自分みたいだな、とAは思った。
肌に当たると音もなく溶ける、あまりにも軽くて、取り留めがない。

辺りは暗く、静かだった。月明かりだけがAの姿を照らしている。建物の並ぶ街中。昼間は多くの人が行き交う広い道も、時間を問わず薄暗い路地裏も、どちらも区別無く、静寂に包まれている。

そんな中、フードを深く被り、ふらふらと歩いていく。

目的地は無かった。兎に角、身体を休められる場所さえあればどこでも良かった。痛み等は大したことないが、酷く足が重くて、そのせいで真っ直ぐ歩けているような気がきしない。
とりあえず体を温めたい。

狭苦しい路地を進む。もう少し街中まで歩けば、きっと宿屋か何かくらいあるだろう、
あと少し、あと少し＿＿＿。

そんな調子で歩くAが雪道に残す足跡は、1面真白で滑らかなキャンパスに、赤い、赤い線をゆっくりと引いていた。

深く被ったフードの下に、明るい月の光は届かなかい。例えAの姿を見るものがいたとしても、その表情まで見ることは出来ないだろう。

静かな世界に、Aの呼吸する音だけが響いて溶けて、どんどん体の熱を奪っていく。