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「とりあえず水飲め」
「んー、ありがと、……暑かったんだよねぇ、」
「シャワーは明日な、」
「……うむ、仕方ない」
しっかり500mlを飲みきるまで絶対寝かせねぇ。そう思いながらなAを見張るが。喉が渇いていたのだろう、案外こくこくと飲んでくれた。
そりゃあんな甘いカクテル飲んでたら喉も乾くか。
「みんなまだ飲んでるの?元気だねぇ」
「Aがハイペースで飲み過ぎなんだ」
「あー、確かに。へへ…」
自覚はあったのか。
「今日は随分楽しそうだったな」
「……うん!皆とね、この前の旅の話してて」
「知ってる、聞いてた」
「あれ、聞こえてた?」
きょとん、とAが小首を傾げた。確かに少し離れた所にはいたが、注視して聞けば聞こえない距離じゃない。別に聞き耳を立てていた訳じゃないが、Aの声はよく通る。何故かこいつが話していると文字が頭に入ってくるのだ。
「………勝手に他の海賊団から勧誘されてんじゃねぇよ」
「んへ、えー、そりゃ不可抗力」
「お前はおれのだろうが」
我ながら横暴だとは分かっている。Aを航海に連れ出した時も、『野蛮なのはあんまり好きじゃないなぁ』と言うAに『お前は戦わなくていい』と言ってまで勧誘したのだ。
『まぁでもいいよ、ついてく』と言ってにこりと笑ってはいたが、海賊というお世辞にも褒められるような職では無い道にAを連れ出したことを、Aは恨んでいたりしないだろうか、と思うことは、たまにある。
Aが居ない夜を過す日などは特に、このまま帰って来ないかもしれないなとか、でもAが居場所を見付けて幸せでいるのならその方がいいのかな、とか。
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作者名:幸せうさぎ | 作成日時:2023年2月9日 0時