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たくさんあったプログラムも無事に終わり、最後にチームを去る由伸と山��からの挨拶があった。そして写真撮影の時間が始まる。
「A、おいで」
「へ、？」
山��と他の人らが写真を撮っている隙を見計らって、由伸はAを呼び寄せる。どうせ自分はメジャーに行くのだし、どうにでもなれと半ばヤケクソだった。
「こっち向いて」
「っ、ちょ、」
Aの腕を引いて抱き寄せると、
「後で話あるから、きて？」
と耳元で囁いた。するとAは顔を真っ赤にして、小さく頷いた。
「A。写真撮ろってサチさんが……」
「お、ん。すぐ行くわ」
Aはそう言い残して、颯一郎の後を追っていった。
彼と初めて会ったのはいつだったか。まだ寒い舞洲で、彼は自分に駆け寄ってきたはずだ。
「……近畿大から来ました、1年目の英河Aです。色々わからないので、よろしくお願いします」
「……5年目の山本由伸です。お願いします……え、まって、大卒？じゃあ同級生やん。よろしくな」
そういった時の彼の顔は今でも忘れられないほど可愛くて、心がぎゅっと掴まれた。
年月を重ねるにつれて、彼はいろんなことをスポンジのように吸収して、たくさん笑って、たくさん泣いた。なぜだろうか。彼の一挙手一投足に胸が高鳴るのは。
「それ、好きっていうやつじゃない？」
「すき」
「うん、由伸、Aのこと好きなんじゃないの」
「俺が、Aのこと、好き」
「うん」
頼りにしている若月にまで言われてしまい、由伸の頭は完全にショートした。サロンの中には空調の音だけが響いている。
「まあ、好きっていっても色んな種類あるし、そんな深く考えないでいいと思うよ」
「ありがとうございます」
若月が出ていった後、机に突っ伏して考える。Aのことは好きだし、もっと笑顔を見たいと思っている。しかし、どちらかがチームを去るという時、自分は耐えられるのだろうか。自分の心をAに伝えて、彼は受け止めてくれるだろうか。
「う〜」
「何うなっとんの、由伸」
「うぇ」
目の前には自分と同じ姿勢を取って、菓子の方へ手を伸ばすAがいた。
「なんか悩んどるん？このお菓子美味しいで」
ああ、この顔だ。にっこりと上がる口角も、薄く色づいた唇も、自分を呼ぶその声も、全部全部好きだ。
それを伝えるのは、どちらかがチームを去る時でいいかな。しばらくは、彼の近くで、彼に伝える「好き」を集めていこう。由伸はそう考えてAの方へ手を伸ばした。
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作者名：usa426 | 作成日時：2023年11月1日 23時
