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「どうぞ」
「ありがと」
「適当に荷物置いといてください」
「はーい」
そう言って家の中に入っていった建英の後ろをついていく。シンプルながらもおしゃれな家具がセンス良く並べられており、彼の育ちの良さを感じさせる。Aは適当なところに荷物を置くと、家の中を見渡した。綺麗に片付いていて、なんだか落ち着かない。キョロキョロと見渡していると後ろから声がかかる。
「コーヒー飲みます？」
「うん」
「砂糖とミルクは？」
「……いっぱい」
「子供舌っすね」
「うるさい」
「sí」
相変わらずのスペイン語に思わず笑みが溢れる。薫以外の人と話すのは久しぶりで、少しだけ緊張している自分がいた。建英はそんなAの様子に気づいていたようだが、何も言わずにコーヒーを作り始める。
「はい」
「ありがと」
目の前に置かれたコーヒーを口に含むと、程よい苦味が広がる。彼の優しさを表しているかのような味だ。ほっと息を吐けば建英はくすっと笑った。
「なんですか？」
「いや？」
「別に何もしないっすよ。ただAくんと話したいなーって」
「いいよ」
Aが言うと建英は嬉しそうに笑う。その姿がなんだか可愛く思えて、Aはそっと手を伸ばした。
「可愛いね、タケ」
「もーほんとそういうとこ」
「そういうとこって？」
「わかんないならいいっすよもう」
建英はどこか諦めたようにため息をついたあと、もう一度コーヒーを啜った。タブレットやらパソコンやらをリビングに置いたままにしているので、おそらくそれに資料を表示させて、目を通すのだろう。建英にコーヒーのお礼を告げると、Aも荷物の片付けを始める。久しぶりに会う建英はなんだか大人びていて、少しだけドキドキする自分を気取られないように必死だった。
建英は大人びた表情をしており、なんだか前よりもかっこよくなったような気がする。Aはそんなことをぼんやりと考えながら彼の作業が終わるのを待っていたが、いつまで経っても終わる気配がない。
「タケ？ねえ、終わった？」
「まだー」
「遅い」
「じゃあ手伝ってくださいよ」
「なにを」
「俺の相手」
建英は楽しそうに笑いながら言う。Aは彼の元まで歩いていき、隣にちょこんと座った。それから少し拗ねたように口を開く。
「早く終わらせてよ」
「もう終わりますよ」
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
