睨まないでよ【シルバー】 (ページ44)

今日:12 hit、昨日:8 hit、合計:45,593 hit

勝手にすりゃいいページ44

・

「えっ！！！！」

「もちろん、タダで……というわけにはいきませんが。」

チラリと後ろを振り返ると、監督生は大きく目を剥いてジェイドの話に釘付けだった。ああ、しまった。監督生が興味を持ち始めている。手遅れかもしれないと、心の中で大きな溜息を吐いた。
ジャックは大きな舌打ちをして、額に青筋を立てた。どこまでもアズールが気に食わないらしい。

「チッ、それが本題か。監督生にもアイツと契約させようってんだな。」

「そんなに牙を剥き出さないで。陸の生き物はどう猛ですねぇ。」

『煽るな煽るな』

たまに出るジェイドの煽りが高度過ぎてハラハラする。この人は本当に歳上なのだろうか。ジェイドを怪訝な目で見上げると、彼はクスリと笑った。いや微笑まれても。
善人面する彼らに溜息を吐く。その冗談は笑えない。

「オレたちは親切で教えてあげてるだけだよ。ねぇ、ジェイド。」

「ええフロイド。僕たち、悩みを抱えている可哀相な人を放っておけないタチでして。」

心にもないことをよく言うよ。Aは肩をすくめた。
ふふふ……クスクスと笑う二人に、Aは眉を顰める。監督生に近づきすぎたジェイドを気圧すように前へ出て、ジェイドの胸を拳でドンと叩いた。威嚇をするAにジェイドはいつもの様に笑った。フロイドも、イルカちゃん邪魔～と言って笑っている。一体何が面白いのか。流石に手癖が悪すぎる。

『馬鹿言わないで、監督生にまで手を出そうだなんて。』

「おや、僕がしているのはあくまで”提案”です。」

ジェイドの胸に当てた右手をグッと掴まれた。邪魔するなということなのだろう。彼自身力を入れているつもりはないのだろうが、体格の差といい、彼が人外というのもあって、締め付けられるように痛い。彼の手袋と肌が擦れてヒリヒリと痛む。
ジェイドを睨みつけたまま、左手では警棒を抜く寸でだった。そこでフロイドが口を開いた。

「そうそう、それにさぁ、イルカちゃんには関係なくね？」

脳内でブチッと何かが切れる音がした。所謂堪忍袋の緒とやらだ。怒りの沸点という言葉も私からすれば、融点、という表現の方がしっくりくる。

『………そう、じゃあ勝手にすれば？』

勢いよくジェイドの手を振り払い、大食堂を立ち去った。後ろからイルカちゃん…？と不安そうな声が聞こえてきたが、これは幻聴だと、自分に言い聞かせた。馬鹿。もう知らない。