睨まないでよ【シルバー】 (ページ32)

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水の中の寮ページ32

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ジャックが、なんて間抜けな絵面だ……とマジな顔で言ったのが面白くて、つい笑いが堪えられなかった。ツボが浅いのは重々承知だ。追いかけてみようと監督生に誘われた為、ジャックも誘ったが、なんで俺まで…と断られてしまった。

『ダメかい？』

「もしかして怖いの？」

「誰が臆病もんだって？」

『誰もそこまで言ってないよ』

監督生の一言にカチンと来たらしく、ジャックも来てくれることになった。イソギンチャクたちが消えていった方へAたちも走った。

「俺はこの変な現象の原因が何か気になるだけだ。別にアイツらのためじゃねぇからな。くれぐれも勘違いすんなよ。」

「素直じゃないなぁ…」

『誰もそんなこと聞いてないしね。』

可愛いなあと、撫でくり回したい衝動に駆られたが、彼も同学年の男子だということを思い出して自制した。

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着いたのは鏡舎だった。大体どこに行くのか検討がついているAからすればリセマラした後のチュートリアルのようにつまらなかった。

オクタヴィネル寮へ続く鏡の前で大渋滞が起きていた。そこでは様々な寮の寮生の頭からイソギンチャクが生えていた。ハーツラビュル、サバナクロー、スカラビア……

私はその人数の多さにうんざりしていた。

「なんだ！？あの３馬鹿以外にも頭にイソギンチャクを生やした奴らがたくさんいやがるぞ！２、３年生の生徒もいるみてぇだ。全員オクタヴィネル寮に繋がる鏡へ入っていく。」

「インチキタコ野郎って誰だろう……」

『直にわかるよ。』

Aがそう呟くと、監督生が「知ってるような口ぶりだね」と言うので、『知らないとは一言も言ってないからね』と笑って返した。
鏡を越えて寮へ入ると、二人はらしくもなくはしゃぎだした。私も初めて来た時は吃驚したよ。これが海かって。

「うわぁ！水の中に寮がある！」

「マジかよ！すげぇな、ナイトレイブンカレッジって！」

慣れない海に目をキラキラさせる二人をジーっと見ていると、ジャックはハッとして、恥ずかしそうに目を逸らした。

「……ゴホン。仮にも別の寮の縄張りに入るんだ。お前も浮かれてねぇで、用心しろよ。」

今更カッコつけられてもと思いながらも、彼の威厳を守るため、Aと監督生は微笑んで誤魔化した。

『モストロ・ラウンジまで、案内は任せて。』

二人は「モストロ……？」と首を傾げたが、Aは『直にわかる』の一点張りで、イソギンチャクたちを追いかけた。