彼女こんな子変わった子。 ページ23
NOside
無事にテストが終わり、浮足立つ生徒たちが集まったモストロラウンジ。そのテストが無事でなかった者も、余裕で終えた者も皆、喉元過ぎれば熱さを忘れるものだった。男子高校生らしく、学園の紅一点の尻を追っかけ回すように、その給仕姿を一目拝みに来ているのだ。
―――――A・アジーム
元ハーツラビュル寮の特待生で、現オクタヴィネル寮特待生。
女子ながらにNRCに特待生入学し、成績は入学以来主席を独占。
体力育成、錬金術、実践魔法の成績も上位。
世界有数の富豪[アジーム]出身であり
その美貌と人柄から【天使】とも【悪魔】とも呼ばれる。
NRCの高嶺の花――――――
その噂が嘘でないにしても、Aは腑に落ちない気持ちを抑えきれなかった。流石に過大評価しすぎである。
『(そんなことないのにな……)』
Aの脳内では、それら全てを否定できる根拠があった。
先ず一つ目、女子ながらに闇の鏡に選ばれたのだから一般入学は有り得ない。特待生入学という形がAも学園も都合がよかった。
そして二つ目、特待生入学したものが成績主席は当たり前だ。誰彼構わず特待生にするほど学園側も暇ではない。才と教養、可能性のある者でなければおいそれと特待生には出来ない。
更に三つ目、アジーム出身なんて聞こえはいいが、Aがアジーム家で過ごした期間も多寡が知れている。その上後継ぎの長男でもない限り、アジームの名だって飾りでしかない。
最後に四つ目、美貌は言いすぎだ。人柄だって良くない。外面の間違いである。兄であるカリム・アルアジームの評価であれば正当な評価だが、Aには美貌やら人柄やらは兼ね備えていない。
彼女は自身を過小評価してしまう節がある。それも、今まで育った環境が原因であるが。物心ついた頃には主がいたのだ。臣下は主を立てるもの。謙虚で忠実であるもの。Aは臣下の鑑であった。
入学当初より伸びた髪を揺らしながら、あっちこっち忙しなく働いているAを、学生たちは溜息を吐きながら見ていた。
ハーツラビュル寮の寮長のお気に入りで、サバナクロー寮への転寮の勧誘も未だ絶えずに来ている。スカラビア寮の寮長の実妹で、仲の良さは学園内でも有名だ。ディアソムニア寮の上層部の溺愛っぷりも、知らない者はいない。何よりオクタヴィネル寮の3人が、彼女に隠れて虫よけしているとか。
本人は全くそんなこと知らず、今日も今日とて仕事に夢中だ。
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作者名:天 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時:2020年11月13日 19時