睨まないでよ【シルバー】 (ページ20)

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頭の悪い子ページ20

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ジェイドの隣で溜息を吐いたアズールと、ばっちり目が合った。すると、アズールは気まずそうに目を逸らした。自分が何かやらかしたかと問われれば、否とは言い難い。なんせ心当たりしかないものですからね。

オクタヴィネル寮に転寮してから悪い心当たりが多すぎる事例が何件もあった。それでもアズールに何かしたわけではない。

モヤモヤしながら布巾を片付け、アズールの隣に立った。さっきこのことがなかったことの様に、アズールは契約違反をしたであろう彼に、詰め寄った。

「君、何故昨日は呼び出しを無視したんです？ご自分がどういう立場か、わかってらっしゃらないようだ。」

アズールは眼鏡を掛け直しながらそう彼を睨んだ。照明が眼鏡に反射してアズールの表情はわからないが、機嫌が悪い事は分かる。

「き、昨日はちょっと腹の調子が悪くて……」

本当に誤魔化す気があるのかという口振りで彼はそう言った。馬鹿馬鹿しいとは思いつつも、私は眉を下げて彼に近づいた。顔を見つめられると、嘘は吐けないものだ。相当人生が嘘で塗りたくられてない限りは。

『今は大丈夫なんですか？』

「え、あ、い、いや……」

「本当に？嘘をつくとためになりませんよ。」

全く以ってその通りだ。心の中ではそう思っていても、口にはしないものだ。人間とは難しい生き物だ。

ここまで分が悪いのに本当だと言い張る彼に、同調する様に私は彼の隣へ行ってアズールたちに言った。

『そうですよ。彼が本当に嘘を吐いてるように見えるんですか？人間は繊細な生き物なので、少しのことですぐ体調を崩してしまうんです。それに、こんなくだらない嘘吐く人なんていませんでしょう。ねぇ？』

そう言って彼に微笑みかけると、顔を真っ赤にして「え、あ…」と口籠った。やめてくれ。私は仕事をしてるだけなんだから、変な気持たないでくれ。
アズールはムッとして、何故かAの方を睨んだ。コイツとちょっと距離が近いのは許せ、貴方の指示だ。

寮長は私怨を含んだ瞳で、ジェイドに指示した。

「ジェイド、彼がもう少し素直にお話できるようにしてあげてください。」

「わかりました。……ふふ、そんなに怯えた顔をしなくても、痛いことはしませんよ。」

これでAの役目は終わった。Aはモブ君の隣からスッと消え、フロイドの後ろに隠れた。えっ？と声を洩らす彼を、流し目で見た。

彼には申し訳ないけど、私、馬鹿な子嫌いだから。