魅力３ ページ29
津田side
僕たちが到着してからそれほど経たずに他の出演者も続々と到着した
Aくんと面識がなかったのは僕だけだったらしく
他の人たちは到着するや、すぐにAくんと話し始めた
津田「ほんとに人気なんだね」
杉田「Aですか？」
津田「うん」
岡本「ファンからの人気もそうですけど、周りのみんなからの人気がすごいですよね」
岡本くんの言葉にコクコクと隣で頷く杉田くん
確かに、同業者だけでなく音響監督やスタッフのみんなと分け隔てなく会話を交わして
周りの人みんなに愛されているのを感じる
それを傍から見ている自分も、和やかな雰囲気につい笑みが零れる
杉田「あ、その顔」
岡本「あら。津田さんもですか？」
津田「え？」
岡本「安元さんとか鈴村さんと同じ目してましたよ」
保護者になるのも時間の問題ですねと茶化される
そんな顔してただろうか･･･
そうこうしているうちに時間になってテストが始まった
そして、なるほど確かにAくんの魅力はこういう所かとまざまざと見せつけられる
スズがお昼に言っていた声優としての演技に対する姿勢というのが伝わってくる
〘君は、それでいいと思うのか〙
岡本〘これ以外にどうしろって…〙
〘私はただ君の意思を確認しただけ。それ以外の方法など、くだらないことが聞きたいんじゃない
その行動が君にとって正しいものか、それだけを私は君に問いかけているのだ〙
演じる事の矛盾を、経験で乗り越えたような･･･そんな演技に魅了される
考えて考えて、寄り添って、なりきって
そうやって頑張れば頑張るほどに、自然さがなくなっていく矛盾
でも掛け合いをするとわかる
そこに居るのはAくんではなくて、そのキャラクターだ
言葉をかけると、言葉が返ってくる。ごく自然な会話の在り方
セリフよりも自然に、そのキャラクターが感じて考えて発してる言葉
非日常の会話が自然に紡がれる、そこには違和感がない
監督「はい。テストオッケーです。ありがとうございます」
津田「･･･すごいね」
鈴村「ほんまに」
つい呟いてしまった
初めて会ったときに感じた、鋭いくらいの品の良さ
みんなと話しているときの、暖かくて柔らかい雰囲気
そして、演じているときの愚直さ、真面目さ、ひた向きさ
声優としての魅力だけじゃない
人としての魅力
あぁ、この子はすごい。ずるいくらいに
周りのみんなが惚れるのがわかる
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作者名：うるげぃりあ | 作成日時：2023年4月10日 19時
