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「あらきさん、あらきさん」

俺が目覚めたのは、彼女の声と肩を揺すられる振動と、冷たいフローリングの感覚のせいだった。んん、と唸って重たい瞼をこじ開けると、赤のペディキュアが視界に入って、昨晩の記憶を掘り起こす。


確か、彼女のピアスを開けて、唐揚げ頼んで、気付いたらもう日付越えてて、それで_

ここまで思い出して、俺はがばっ、と身体を起こした。その反動で全身がバキバキバキっと音を鳴らしたが、これはもはや慣れたこと。

「おはようございます」

「…おは、よ」


彼女はくすくすと笑って、近くに寄ってきた茶トラの猫を撫でた。

「昨日はご迷惑おかけしました、家で休ませてもらっちゃったみたいで…」

「あ、いや、俺の方こそ勝手にごめんなさい」


しゅん、と項垂れて謝るAに、大丈夫です大丈夫です、と繰り返してたっけか。

世界はもう昼なのか、柔らかい日の光が廊下にも射していた。彼女はと言うと、煙草とアルコールが染み付いた昨日と同じ服で、でもメイクは落としたのか少し覇気のない顔をしていた、と思う。失礼かな、ごめんね。



「わたし、帰りますね」

「あ、送りますよ」

なら、と微笑んで、二人とも昨日の服のまんま、明るくなった日常に足を踏み入れた。

この時間に出歩くこととか、しかも女の人と二人でとかそうそうなくて。無駄に緊張してちょっと何喋ってたか全然覚えてないんすけど、


ただ、その時に、一目惚れをしたかもしれない、なんてことを彼女に言ったのだけは覚えてるんだよな。一番忘れてぇのに。

_え?その後、私もなんて言ったAの顔が赤かったのもちゃんと覚えてるかって?




***




「そりゃもちろん」

「あほ、なんでそういう言い方するの」


赤くなってなかったじゃん、と柔く頭を叩かれる。せっかくセットしたのに、と文句を垂れればテキトーな謝罪が返ってきた。



「…似合ってんね、ドレス」

「あらきは白超似合ってないよ」

「やかましいわ」


べー、と舌を出せば、着付けのお姉さんにくすくすと笑われた。仲いいですね、なんて、まぁ仲良くなけりゃこんなとこまで来てないし。





「…人生、何があるかわかんないって、よく言うじゃん?」

会場のスタッフさんがいなくなってから、彼女はそんなことを言った。



「私あんまりいきあたりばったりなの好きじゃないんだけどさ、こういうのは好きだよ。」







俺が開けたピアスが、小さく光った気がした。

【まふまふ】ぐちゃぐちゃココロ、/白椛→←【あらき】いきあたりばったり/志賀つくだに



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飴依存症の人*神作掘り出し隊(プロフ) - すげえ…どれも良かったけど菊花さんので泣いちまったよ…。 (2019年9月13日 16時) (レス) id: 9ac419bf0d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年9月11日 21時

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