＊ ページ28
*
「…ん、」
「あ、起きた？」
目が覚めると、結わえていた髪を肩口に落としたAが覗き込んできて、なんとなく恥ずかしくて布団を口元まで持ち上げた。
うん、と頷くと彼女はそっか、なんて言って背を向けた。
上体を上げて今度は俺が彼女の手元を覗くと、スマホが握られていた。
画面には見たことがあるアイコン。
「…なにしてるん」
「……なに…って、志麻さんとラインしてるの」
「なんで、」
「…今日のお礼」
ふーん、なんて興味なさげに言ってみるが、心臓はどくどくと脈拍数を増していた。
寝起きでまだはっきりとしない脳内で、あぁ…やだなぁ…なんて呟く。
彼女に届かない場所でなら、いくらでも本音を言うことができるのに。
…その顔見てもうたら、言えんよ。
彼女の細い体に腕を回し抱きしめると、邪魔だよ、なんて声が耳にダイレクトに伝わってくる。
「…悠はさ、」
「………」
「私とどうなりたいの？」
恥じらいも、緊張も、その声の上にはなかった。
淡々と、問いかけのみが空気を震わせていた。
「…ずっと、傍におりたい」
「それだけ？」
「…だけ、とちゃうよ…」
小さく囁くが、彼女には届かなかったのかため息が聞こえてきた。
Aが離れたかと思うと、ぱちりと部屋の電気が消える。暗闇の中からもう寝よ、という声がする。
納得できていないもやもやとした心のまま、再び布団を被る。温まっていたそれはとうに熱を逃していた。
寝て、薄れさせてしまおう。
今日見た不愉快極まりない景色も、Aの曖昧に匂わせた距離感も。
全部、消えてはくれないから。寝て、記憶を整理してしまおう。
ああ、でも。この願いだけは消えてほしくない。
＿＿いつか、同じ夢が見れますように。
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飴依存症の人*神作掘り出し隊(プロフ) - すげえ…どれも良かったけど菊花さんので泣いちまったよ…。 (2019年9月13日 16時) (
レス) id: 9ac419bf0d (このIDを非表示/違反報告)
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