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【志麻】乾坤一擲/nana ページ20

世界を救うか、彼女を救うか。

 その選択はあまりにも理不尽でどうしようもなく残酷でありえないくらい不条理で。

 ――――――だから俺は、選ぶことを放棄した。

 どっちも救う、なんて洒落たこと考えちゃいない。
 一切の迷いもなく。
 何の躊躇いもなく。
 何ら考えることもせず。
 さながら狂った賭博師のように。

 真っ直ぐに、彼女へ、手を伸ばした。

 ***

 世界を救えという重すぎる枷を背負って旅をした。高山の氷からできた剣は一度たりとも溶けなかった。自分の色に染められた紫の鎧は、いくら傷つけど砕けることはなかった。
 幾千もの魔物を切り倒した。
 幾万もの悪と対峙してきた。

 毒々しい返り血を浴びる中、耳にこびりついて離れない断末魔を聞く中、―――途絶えることのない疑問があった。

 ―――いつまで続くんだろう。

 重たい。苦しい。
 善いことをしているはずなのに。
 正しいことをしているはずなのに。
 何だこれは。
 なぜこうも締め付けられる。
 なぜこうも縛り付けられる。

 逃がしてくれ。

 そう願った先に、彼女はいた。

「頑張ろう」

 何よりも欲しかった言葉をくれた。
 竜ドラゴン()の爪で出来たグラスを、ちぃんと銀色の線を引くように洞窟の酒飲み場で打ち合わせて鳴らした。
 
 同志でしょう、と囁くように呟いた。

 頑張れなんて言ってほしくなかった。そんな、一人で戦えと言われているような残酷な言葉。勝手にやってろと捨てられるような冷酷な言葉。

 共に頑張ろうと言ってほしかった。
 どう抗ってもきりのない。敵わない。救えない。
 そんな世界に光明を見出だせなくてもいいから、共に戦ってくれる誰かを。背中合わせで呼吸を揃えてくれる誰かを、自身の意志で苦しみを共にすることを選んでくれる誰かを、求めていた。

 頑張ろう。

 魔物から自身を守るために着ているゴツい鎧、それにつけられた数多くの傷。

 それと相反するように零れた言葉と微笑みは、年に一度の祝祭で見ることができる天使のようで。

 きっと大丈夫だと。俺とAなら、大丈夫だと。

 そう思えたんだ。

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飴依存症の人*神作掘り出し隊(プロフ) - すげえ…どれも良かったけど菊花さんので泣いちまったよ…。 (2019年9月13日 16時) (レス) id: 9ac419bf0d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年9月11日 21時

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