【歌い手】惚、好、愛、結 team.A【大型コラボ】 (ページ7)

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【うらたぬき】焦燥/あおいページ7

『私は親の七光りなんかじゃない！
私は、私は自分の実力でここまで......！』

「はい、オッケーです！お疲れ様です」
「ありがとうございました。お疲れ様です」

思いを、感情を、声に乗せて表現しキャラクターに命を吹き込む。それが声優。それが私の仕事。

今日の分の収録を終えて帰宅しようとスタジオの廊下を足早に進む。そうでもしないと聞きたくないことを聞いてしまうから。

「あいつ本当に親のコネ使ってないのかなぁ？」
「使ってるでしょ。演技だってたいしてうまくもないのに、私たちより早くデビューして、色んな作品に出演してるのおかしいじゃん」
「だよねー」

後ろから聞こえてきた声に、思わず耳を塞ぎたくなる。あの子たちは私がそれを嫌がるのを知っていて、わざと聞こえるように話しているのだけれど。あぁ、聞きたくなかったのになぁ。そんな嫌味は聞こえないふりをして、その場を通り過ぎる。

お父さんが少し有名な声優だった。たったそれだけのことで、私の実力は認めてもらえなくて。お父さんのコネを使っていると勝手に勘違いされて、嫌味を言われ、嫌がらせをされる。それがたまらなく悔しくて涙が出そうになる。

さっきまで前を向いていたはずなのに、いつの間にか俯いてしまっていて、前から歩いて来る人に気付けなくてぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさい。ちゃんと前見てなくて......」
「こちらこそ...って、Aか」

ぶつかってしまった相手に謝罪すれば返ってきた声は聞き覚えのある声で。安心できる声で。

「うらたさん......」
「おー、お疲れさん。たまたま近くで用事があったから迎えに来た」
「ありがとうございます」
「ほら帰ろうぜ」

そう言って手をひいてくれるうらたさん。きっと私になにかあったことに気付いているのに、何も言わないでいてくれるのは彼なりの優しさなのだろう。その優しさが暖かくて、堪えていた涙が一筋頬を伝った。