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そらるはどこまでも優しく、私を第一に考えてくれる人間であった。何かあれば心配してくれるし、能天気に思われがちだが、人一倍心配してくれて、誰よりも私を愛してくれた。
そらるの隣に立てるようにと、音楽の腕をさらにあげようと勉強していたが、その結果がこれだとは思わなかった。
きっと、友人に相談しても「別れるの?意味わかんない」と言われるだろう。だが、別れない訳にはいかないのだ。
彼を、永遠に束縛してしまうことになるから。私の事など忘れて早く新しい恋をして欲しいから。
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「そらる、私ね、そらるが大好きだよ」
「え、何いきなり」
「んー?何となく伝えたくなったの」
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そらるのために別れるから。だから、
(どうか、泣かないでいる私を褒めてよ、そらる)
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あれだけ悲しい顔をしていたかと思いきや、今度はいきなり好きだと行為を伝えてくるAが本当に訳が分からない。
俺が振り回されてばかりでは無いか。
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「雨、止まないねぇ」
「だな。どうする?タクシーで帰る?」
「んー、もうちょっと話してたい」
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本当に分からない。元気が無いかと思えばこんな事を言ってのけるのだから。
だが、その元気の無さは回復する所か段々と更に元気が無くなっていく。
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「今度のライブいつ?」
「明後日だよ。来る?」
「ううん…明後日も大学が忙し過ぎて行けないの」
「……いつか、隣りに立てる事考えたら我慢出来るよ」
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嫌だ。この雨が全てを崩して行くような音がして。とても泣きたくなってしまう。雨に打たれて、泪を全て流してしまいたい。
(彼女一人も笑顔に出来ないで…恋人失格だな、俺)
何をどう考えても、出てくる答えは全てネガティブなものばかり。ネガティブ思考もいい所だ。
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「やっぱり、雨音響いてる。全然降り止まないね。そらる、明日晴れるかな?」
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そして、彼女のその言葉の意味を知るのは後の話。彼女とはそれ以来会う事は無かった。
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「そ、らる……」
「……………………A、」
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Aと会えなくなって三年。空を見上げれば、そこには眩しいほどの太陽と、雲ひとつない晴天であった。
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(Right:Fin...?)
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