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「波ァーーーーーーーーー!!!」
「だァーーーーーーーッッッ!!!!」
指先に、細い針を何本も刺されたような痛み。その針が一斉に、梃子の原理で爪を剥がす。
指先からどんどん皮が薄く捲れていく。ピーラーで削がれるように、神経がひりつく。ばきばきと、内側から骨が砕けていく。
声が裏返る。いつの間にか悲鳴を上げていたらしい。ベジータの腕が強く、掻き抱くように、乱暴に体が締め付けられる。痛みで、かめはめ波の軸がブレる。悟空の後ろにある建物に当たり、数少ない蝗がこちらに飛んでくる。歯を食いしばって、手のひらを蝗に向けて、しかしそれでも定まらない。
「ベジータァ!!!!」
割れる声に、彼の顔が顰められる。悟空も嫌な汗が溢れているような、背中が冷える思いだった。
ベジータは痛みで暴れる彼女の腕を押さえつけ、蝗に向けた。悟空とAのかめはめ波で挟み撃ちにされて、蝗たちはどっちにいくこともできず、どんどん塵になっていく。
バンッと酷い破裂音がベジータの耳のそば。ぎょっとして、それはベジータの目の前で起こったことだから、瞬きすることすら許されなかった。
Aの頭が上半破裂した。走馬灯のように、金色の美しい瞳が、あの下手な笑顔が、美しい髪が思い出された。
「おい、もう」
悟空が静止の声を上げた。それを否定するように、Aは一層悲鳴を上げて火力を上げた。
内臓がひしゃげて、内側から割れる。ベジータの腕の中でAの腹が粉々になっていく。同じく傷口から黒い粘液が溢れて、まるで泥を抱いている気分だった。
足元に溜まっていく黒い泥沼。再びバンッと破裂したのは、Aの腹の中。割れすぎた皮膚は爆発に耐えきれずひどく抉れて粘液がベジータの服をひたすらに汚した。その傷口は鉱物が割れたように鋭利であり、肉が腐ったように粘っこく、飛んだ破片は地面に刺さるほどだった。ベジータの服も裂けて、肌は少しひっかかれた。
これだけの痛みを覚えてなお、まだ10秒も経っていない。
全身の骨が両手で擦り潰される。内臓が次々破裂する。無くなった足や手がもがれる様に痛い。ただひたすらに痛い。
痛い痛い痛い、痛い痛い痛い。こんな体、なんでこんな運命に、私が何をした。私が何をした!なんで私がこんな目に!ちくしょうちくしょう、こんな星を守るためだけにどうして私が、どうして、痛い痛い痛い!!!

悪人ばかりなのに、たった一つ見える希望が、眩しいせいだ。

最後の一匹がとうとう燃え尽きたとき、ベジータは彼女の頬を叩いた。
力がそのまま抜けて、彼女はだらりとぶら下がる。

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ニック(プロフ) - とても良い作品でした。最終回なのが悲しいです。 (2023年4月25日 17時) (レス) id: 929d0bcae2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:メルト | 作成日時:2022年8月3日 17時

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