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それから目が覚めたのは、東雲が美しい時分のこと。
どうやら私は、部屋の一室にて布団に寝かされていたようであった。
◯
暖かい布団の中で重たい瞼をゆっくりと開けると、視界がぼんやり霞む。
障子の隙間から漏れるうっすらとした明かりが静かに夜明けを知らせていた。
「………あれ、朝か……」
ふあ、と大あくびをしながら寝ぼけ眼を擦ると、どこからか香る檜の匂いが鼻腔をくすぐった。
うーん、と仰向けになった体をグッと伸ばして、脚を左右にもぞもぞさせると、なんだかドッシリとしたものに足先が触れた。
うん?と、上体を起こしてそれを確認すれば、そこには昨晩のキツネが、鼻先を尻尾の毛で隠すように丸くなってすやすやと眠っていたのであった。
驚いて思わずアッと叫びそうになるのを手で抑えると同時に、私は昨夜の出来事を全て鮮明に思い出した。
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「ちょっと!!キツネ君!!!」
「起きて!!!一体どうなってんのよ!!」
「起きろ!!キツネ!!」
朝の冷たい空気にすっかり頭が冴えた頃、私は眠り続けるキツネ君を起こそうと、それはもう必死に声を張り上げた。
「いい加減起きなさいよ!」
しかし、さっきから起きる気配が微塵もない。
小さな体を掴んで全力で揺するがピクリともしない。
こちらが不安になってしまうほど、赤い模様の入った顔が前後にガクガクと揺れるくらいに激しく揺さぶったりしても、全く意味を成さなかった。
「あーもう、ほんっとに…起きてってば!!」
「……あぶらあげ……それは私のあぶらあげでございますぞ…」
「…………」
キツネ君は手足を動かしながら、プクッと見事な鼻ちょうちんを膨らませたり縮ませたりした。
そしてむにゃむにゃと何かを呟いたと思いきや口端から一筋涎を垂らして、もそもそと寝返りを打つのであった。
「こ、こんにゃろ……」
私は呆れ果て、大きなため息をつくしかなかった。
もういいや…自然に起きるのを待とう……
ふいっと視線を横に向けると、外がだんだんと明るくなっていることに気付く。
___時刻は午前7時、くらいだろうか。
ふがふがと鼻を鳴らすキツネ君の寝言を聞きながら、私はほんのりと黄赤色に染まった障子紙を眺めた。
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みや(プロフ) - 羅胤さん» 羅胤様、初めまして!ご感想いただきありがとうございます!とても嬉しいお言葉です。改善点も視野に入れ、更新頑張ります!本当にありがとうございます! (2020年12月2日 15時) (レス) id: 56bc8124d6 (このIDを非表示/違反報告)
羅胤(プロフ) - みや様、初めまして。本作を読ませていただいたものです。改行が多い点は気になりましたが、文章がとても上手く、物語に引き込まれてしまいました。これからも是非、更新を頑張ってください。陰ながら応援しております。 (2020年12月2日 15時) (レス) id: 6b5b4b25ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みや | 作成日時:2020年11月1日 0時