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「0番。」







前触れも無く響いた野太い男の声。
直接研究室から彼のいる空間につながる
鉄製の自動扉が開いた




そこから入ってきた研究員の腕の中にいるのは








泣いている.....赤ん坊....?






この世の終わりかという程の声で泣き喚く
正直子供は苦手だ。頭が痛くなる









『授乳を。10分後に回収する。』









このΩ.....子供がいるのかよ....

なんせ派遣初日で圧倒的に情報が足りていない。
再びタブレットを操作し、カルテを開いて見れば
ずらりと並んだ薬品投与履歴の中に









〈No.01 4.15 2431g......

 No.02 11.30 2247g......〉








No.01は2年前、No.02は2ヶ月前の確かな記録がある



となると、









「ふーん.....」









研究員から受け取った赤ん坊を
大事そうに抱えた彼は俺に睨みをきかせて背を向けた









「.....ちょっとおっきくなったね」









簡易ベッドの側にぺたんと座り
薄い枕を赤ん坊の首にあてている









「.....今日も...たくさんは出ないかも...」









「お腹、すいたよね。.....ごめんね」









 「.......ん、もういらないの?」









彼が背中をとんとんと叩けば、けふ、と小さな口から空気が抜けた





先程までの態度とはまるで別人
すっかり泣き止んだ様子の赤ん坊を抱えて子守唄まで口ずさみ始めた









「.....ゆりかごのうたをー....」









あぁ、









「カナリアが歌うよー....」













優しい歌声だ。
蜂蜜を湯がいたミルクのような。









『きらきら光るー...おそらの星よ....』









「っ、」









もう忘れたと思っていたのに。

あの人の影が
ゆらゆらと揺れている小さな背中に重なって見えた

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作者名:。_。 | 作成日時:2021年3月18日 20時

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