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◇.
「、悪い。」
黒木が倒したものは既に飲み干されて空になったグラスのため、床が濡れたりなどの被害は全くない。
だがしかし、それはグラスを落とすという行為は黒木の動揺の大きさを表していた。
普段だと黒木がそこまで動揺を表に出すことはないが、今回は無理もない。
それほどにも、自分たちが追い求めてきたものが目の前に、手の届きそうなところまで現れたのだ。
事の発端は約9か月前。
kzが収集されて若武宅でのんびりと時間を過ごしている時だった。
特に事件もなく、平和な時間が流れていた時に鳴り出した若武のスマホ。
ディスプレイには「砂原」の文字が浮かび上がっている。
砂原から電話がかかってくるのは珍しくもなく、月に1度、多くて2度程度でかかって来ていた。
が、今月は珍しく一度もかかってこず、皆後言うとまだかまだかと待ち構えていたため、こうしてかかってきたことはとても嬉しく感じている。
喜んで出れば、普段と変わらぬ砂原の明るい声。
少し前までは色々立てこんでいたが最近随分と落ち着いてきたから、久々に電話をかけれたのだという。
その場には勿論彩も居て、一番嬉しそうに笑っていた。
砂原の元気そうな声が聞けて嬉しいのだと、目を細めている。
「いつ、日本に帰ってこれるの。いつ会えるの。」
ずっと彩の心にしまい込んでいた、会いたいという気持ちは徐々に言葉と言う形を作り上げ、少しずつ零れていく。
彩の頬には、一筋に涙が流れていた。
光が反射し輝く彩の瞳は、細かく輝く宝石の様だった。
守りたい。
そう手を伸ばしたくなる、儚さだった。美しさだった。
しかし、神というものは残酷なもので。
いや、神という存在自体ないのかもしれない。
"ドンッ……"
彩が今まで心に貯め続けた思いを吐き出そうとした刹那、スマホから大きな爆音らしきものが大音量でなり、ノイズが混じり、そうしてプツンち電話は途切れた。
何度電話を掛けても繋がらない。
ただ、無機質な音が流れるだけ。
後日、黒木によって知らされたのは「砂原のいた地域に爆弾が落とされた」という一言だった。
広範囲に及ぶ爆発だったらしく、死傷者もそれなりに大きかったのだという。
それからというものの、皆は砂原の生死の探るべく、手当たり次第に調べ倒した。
黒木は人脈を辿り、若武はマスクルージュに連絡を取り、各々が全力を尽くした。
それでも情報を入手できなかったのだ。
九か月経った、今でも。
◇.
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清霞(プロフ) - はるはるさん» はるちゃーん( ; ; )有難う、楽しんでもらえたみたいで良かったです!コメント有難う* (2019年1月29日 21時) (レス) id: 61be4c1b32 (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - さやかちゃん、ダリアの花束を贈る。完結お疲れ様です。どのお話も好みで、とても面白かったよ。更新される度にワクワクしながら読んでいました。本当にお疲れ様-* (2019年1月27日 20時) (レス) id: 91ccc51c14 (このIDを非表示/違反報告)
清霞(プロフ) - Wings(心渚)さん» みなちゃんありがとう、更新はめちゃめちゃ遅いけどのんびり待ってくれてると嬉しいです* (2018年12月25日 19時) (レス) id: 61be4c1b32 (このIDを非表示/違反報告)
Wings(心渚)(プロフ) - 清霞さん» やっぱこのお話好きだわ笑頑張ってね、応援してます。 (2018年12月25日 18時) (レス) id: ce1217488b (このIDを非表示/違反報告)
清霞(プロフ) - 沙也加さん» わー、ありがとうございます( ; ; )やっぱりkzのわちゃわちゃはいいですよね…!もっとわちゃわちゃシリーズを書けるように頑張ります、閲覧にコメント有難うございました* (2018年12月8日 14時) (レス) id: 61be4c1b32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:清霞 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/somerina021/
作成日時:2018年10月8日 10時