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夢主side




「ごっめーん!待たせた!」


ショートに綺麗に整えられた髪を少し揺らし、駆け足気味に私の元へと走ってくる彼女は私の数少ない友人の1人。
ショートからわかるように志麻リスである。


「ひゃー、ライブ久しぶりだよ〜!」


そう、今日は待ちに待った春ツアーの東京公演日。
1列目いう自己最高記録を叩き出したチケットは無論彼女との連番だ。


「そういえばうらたさんとはどうなの〜?」


ニヤニヤ、という表現が如何にも似合いそうな下世話な表情で私の肩が叩かれる。


「ちょっと!声大きいよ!」


私も肩を叩き返せば、てへっなんて顔面が整った子にしか許されない魔法の表情を向けられた。
自覚済みの美人は時には面倒だ。


「全然だめ...だよ。まともに会話もできないし。なんであんなに皆はうらたさんに笑顔で話せるんだろう。」

「やっぱりだめかぁ...」


うらたさんに対し、冷たい態度しかとれないことを唯一打ち明けた友人である彼女はなんとかしようと躍起になってくれてはいるのだが、未だ失敗続きである。
なにも彼女が悪いのではなく、私が緊張してしまうことが原因なのだが、彼女は負い目を感じているらしい。


「とにかく今日はライブ楽しも!テンション上がれば話せるかもしれないし!」

「うん!」


きっとそんなことはないだろうが、今はとにかく楽しむこととしよう。



_____




「っはあー!楽しかったー!」

「うらたさん最高にかっこよかった大好き...」


安定の語彙力皆無&余韻ひたひたになりつつ、2人で夜道を歩き、電車を待つ。
そうだ、うらたさんの自撮り確認をしなければ、と鞄の中を探れば妙な違和感に気がつく。


「わ、やばい。財布会場に置いてきたかも...」


駅に入るのはICOCAで済ませた為、財布が無いことには今の今まで気が付かなかった。
そうだ、ライブが終わってすぐに缶バッジ交換の約束をしていた方と落ち合ってそのときに傍のベンチで...。

なんにせよ、取りに帰るしかない。


「ごめん、私取りに戻るね。落し物で届いてるかもしれないし!」

「わかった!」


高校生をあまり遅くまで引き止めるわけにもいかないため、彼女は先に帰らせることにしよう。

急いで会場付近に戻れば、最後に財布を使った記憶のあったベンチの上にグリーンの財布は置かれていた。


「良かったぁ...」


さぁ、戻ろう。
そう思い踵を返したときだった。



「まだ帰らせませんよ」





視界が何者かの掌によって遮られた。

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- 初めまして、とても良い作品ですね。更新停止となっていますが、投稿されるまで待ちたいと思います。 (2020年1月16日 18時) (レス) id: 393bcdab68 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむ | 作成日時:2019年4月5日 21時

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