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「とりあえず落ち着け、な?目ぇ冷やそ?」
「優しくしないで」
「兄貴の嫁に優しくすんなっつー方が無理」
「兄貴の嫁がタイプな癖に」
「それとこれとは別の話」
座り込んだ私を立たせようとする竜胆と、意地でも立たない私。
目なんか冷やすもんか。
もう何もしたくない。
恋愛ってこんなに苦しいのか。
人に譲らないといけない場所になってしまったなんて、偽善だけど、でも、あの人の好きな人がいるはずのこの場所に、彼の本命を知りながら居座れない。
痺れを切らした竜胆が、私を担ぎあげる。
「やだっ」
「やじゃないですー、落ち着いてくださいー」
「下ろして!」
「暴れんな、ほんとに落とすぞ」
竜胆の口から舌打ちが聞こえて、そんな言葉が放たれて、また、なんでか分からない涙が出た。
怖くされるのも、優しくされるのも嫌だ。
浅はかだった。
1年前の私が、浅はかだった。
それでも、何回過去に戻れたって、私はこの未来を選んでしまいそう。
だって、この気持ちのまま過去に戻ったって、意味ないじゃんか。
「忠告した」
「分かってる・・・」
「分かってたならなんでこうなんだよ・・・」
「そんなの・・・っ」
私が聞きたい、そういう前に、リビングのドアが開いた。
出てきたのは、女性物の香水と少し乱れた髪が特徴的な、灰谷蘭。
帰ってこないと思ってたのに、なんて思ってから、もう4時なんだからそんなもんかと納得する。
「何してんの」
にこやかにそう聞くその人に、また涙が出て、私は竜胆の背中に回していた手に力を込めた。
「痛ぇわ!力入れんな」
「・・・ごめん」
「何、竜胆、手ぇ出しちゃったの?」
「なんで俺が兄貴のもんに」
「気にしなくていいって、俺らはそんな関係じゃない、な?A」
試すように、私の顔を覗き込む。
分かってましたよ、そんなの。
そうだよ、私達に、愛はいらないもんね。
「蘭、さん」
「は」
「離婚してください」
竜胆に担がれたまま、両手で目を覆って、やっと、出た言葉。
耳元で、竜胆が息を飲むのが聞こえた。
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はな(プロフ) - イケメンになりたいさん» コメントありがとうございます!凄く嬉しいです!新作の更新も頑張ります! (2022年2月18日 21時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
イケメンになりたい(プロフ) - コメント失礼します。こんなに作品に引き込まれるお話を見ることができてすごく嬉しかったです…!新作も更新頑張ってください! (2022年2月18日 21時) (レス) id: 1a2d093916 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - ゆさん» ありがとうございますー!!蘭ちゃんは、酔ってても意識ありそうですよね笑 (2022年2月18日 18時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - 好きです…ありがとうございます(*T^T)ほんとドレスも指輪もどこから持ってきたのか…サプライズが大人のイケメンすぎました…ただの酔っぱらいじゃなかった!!笑 (2022年2月18日 18時) (レス) @page47 id: 1f3bc36824 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - arare19951997さん» コメントありがとうございます!更新頻度の高さ、褒めて貰えると安心します笑確かに!そういうのも面白そうですね!今後の作品の視野に入れてみます!ありがとうございます! (2022年2月14日 19時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな | 作成日時:2022年2月9日 18時