私たちに愛はない【灰谷蘭】

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｢お前はもう寝る時間｣



｢私も寝たいんですけど･･･｣



｢･･･一緒に寝る？｣



｢え、｣



｢兄貴は今から仕事だろ｣








早く着替えろよ、と言われてはいはい、と私から離れていく。






なるほど、お仕事だったから入り浸ってたのか。




え、私そんなに気遣う必要なかったんじゃない？







｢･･･寝ねぇの｣



｢寝ます｣



｢兄貴も俺もさ、家なんて何個もあんだよね｣



｢･･･はあ｣



｢それなのに兄貴、最近基本拠点ここなんだよね｣







･･･そりゃ、帰れば掃除も洗濯もしてあって、ご飯の用意もあれば帰ってくるよ。







灰谷竜胆は、さらっと、私を揺さぶる。



自惚れさせたいのかなぁ。





そんな馬鹿な真似しちゃいけない。








私がいるから帰ってくるんじゃない、あの人は。







｢･･･昨日ここで何してたんですか｣



｢それ聞く？｣



｢･･･いや、会話に困っただけです｣







もう寝ます、そう言って、立ち上がる。








何を思って、聞いてしまったのか、私のバカ。




一般人には見せられない光景や言えない事情があったに決まってる。







入っちゃいけない。




仕事の線は、彼が一度も、外したことがない。







｢お前さ、兄貴に恋愛すんのはやめとけよ｣



｢しませんよ｣



｢傷つくだけだ｣



｢私たちのこの関係、もう１年以上ですよ？｣








笑って、そう答えた。




見透かされたのかも。





でも、恋愛に発展できるほど、私たちの距離は近くない。




大丈夫、私は大丈夫。




まだ踏んでない。超えてない。






私は、愛はいらない。









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