34.おやすみ ページ34
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泣き声が聞こえた。
元気な、大きな、泣き声。
そうか、これが産声。
胸に置かれた自分の子供を見て、
涙でボロボロになった銀時を見た。
私が今まで見た中で、1番泣いてる。
私は、汗と、涙を流しながら
そんな銀時の顔を笑ってしまった。
｢笑うなよ｣
汗でベタついた私の額を、銀時はそっと撫ぜた。
今までだったら、小突いてきてたのに。
そんな優しさに、未だにキュンとする。
坂田さん、元気な女の子ですよ。
そう言った看護師さん。
あぁ、そうか、私、今、坂田って名前だったっけ。
つい先日、婚姻届を出してきてもらったのに。
指輪も、それも、すごく嬉しかったのに。
そんなに嬉しいことすら、私の記憶からは薄れてる。
女の子、女の子。
少し薄い髪の色が見える。
赤ちゃんだからかな？それとも、銀時の白が影響してるのかな？
これから、どんな髪色になるの？
染めたりするのかな。
しわくちゃね。
｢A？｣
かすれた視界が、涙のせいだけじゃないことが分かる。
きっとそれに気づいたんだろう看護師さんたちは
綺麗になった我が子を白いタオルで巻いて、
私の汗を拭いて、身だしなみを整えてくれた。
うん、最後は、少しでも綺麗でいたい。
ありがとうございます、そんなことを言う暇すらなくて。
つらそうな表情の銀時の頬を撫でた。
｢パパになったね｣
｢お前はママだな｣
｢ママ、だって。嬉しい｣
｢俺みたいになったらどうしよう｣
｢ちょっと、やだなぁ｣
｢おいおい｣
｢でも、格好良い女の子になるね｣
｢A｣
｢ん･･･？｣
｢綺麗だよ｣
それから、と口を開いた銀時は、
愛してるよ、と、小さく囁いた。
私は、へへ、と、笑えたと思う。
銀時の頬から、子供の頬へ。
｢･･･桜｣
｢名前か？｣
うん、そう、目を瞑って、そう答えた。
私も、愛してる。
そう、言えたと思う。
生まれてから入れてもらった麻酔のおかげか
痛くも、苦しくもなかった。
ふわふわとする意識の中で、
あぁ、もう、目は覚めないんだと悟った。
意外と、早かったけれど、
桜を産んで、銀時と、お話ができた。
遠い場所で、2つの泣き声が聞こえた気がする。
涙を拭ってあげたいけれど、
きっともう、私は腕すら動かない。
今は、桜が咲いてるよ。
パパは、素敵な人だよ。
おやすみ。
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うさきよ - 感動して、涙ぐんでしまいました…。すごく良いお話です！！ (7月27日 1時) (
レス) @page39 id: 55ad19f9cc (このIDを非表示/違反報告)
凛 - とても良かったです！ (2022年12月14日 17時) (レス) @page48 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - rusa737さん» コメントありがとうございます！面白いけれどやっぱりバッドエンドに当たるので少ない設定ですよね…今後の新作にもまた活用させていただきます！ありがとうございます！ (2021年5月8日 2時) (レス) id: 7ef5ab0f96 (このIDを非表示/違反報告)
rusa737(プロフ) - 通学の電車の中で読んでたんですけどめっちゃ感動しました…！夢主がしぬ設定好きなんですけど余り無いから新鮮かつめっちゃどストライクに刺さりました！！！これからも応援してます…！ (2021年5月7日 17時) (レス) id: 34286106cd (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 常夏さん» コメントありがとうございます！完結もありがとうございました！わーい！桜ちゃんが出てくる回も気になりますよねぇ！良く考えてみます！！ (2021年4月4日 20時) (レス) id: 7ef5ab0f96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あい | 作成日時：2021年3月1日 0時
