私の幸せ[銀魂‐坂田銀時]

31.願望 ページ31

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銀時は1度も、言わなかった。


なんでお前なんだ、とか

死んで欲しくない、もっと生きてくれ、とか。


そんな、ドラマや漫画にありそうな

ベタで、甘い、自分勝手な願望を、銀時は言わなかった。


その言葉は、もちろん人を救う言葉で

人を、苦しめる言葉で。


銀時はそんな甘えた言葉を吐いたりする人じゃない。


でも、彼の言葉の裏にはよく、いるんだ、甘えた言葉が。


初めて彼から直接聞いた、死んで欲しくないの言葉は

思っていたよりも重たくて、辛い。


私を見ないようにする銀時。


思わず銀時を見てしまう私。


貴方はまたそうやって、不器用に、甘えてくるの。


死にたくないよ、銀時。


だってまだあなたといたいもの。


ずっと、一緒に生きて生きたいもの。


銀時と、新八くんと、神楽ちゃんと、定春くんと、この子と、私


5人と1匹の暮らしはきっととても楽しいよ。

色んな人が尋ねてくるの、いつも笑いが絶えないよ。


そんな、当たり前のような日常が、来るはずないなんて、

なんて残酷なんだろう。


みんなで慌てながら子育てをするの。

お昼寝をして、喧嘩をして、文句を言って、

そんなみんなを、私はただ、笑ってみていたい。


いつもみたいに、そばで。


それだけでいいのに。

それだけしか望んでいないのに。


今まで当たり前だと思っていたそんな日常は

今はもう既に、私の叶わない願望になった。



｢A？どうしたアルか？｣


｢･･･ごめん、ちょっと、疲れちゃったかも。

はしゃぎ過ぎちゃったかな｣


｢僕達も騒がしくしちゃいましたしね、今日はもう帰りましょうか｣


｢ごめんね｣


｢･･･新八、神楽、先行ってろ｣



私の涙に、2人は帰ると言った。


銀時は、少し残ると言った。

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